2023年12月31日日曜日

2023年末に

とうとう大晦日だ。

これは、覚悟を決めて大掃除するしかない。窓拭き、ベランダのモップがけ、部屋とお風呂掃除。最後の締めは狭いとはいえ玄関まわり。家族を守ってくれる家だから、一年に一度位は、丹念に拭き掃除。終わってみると何やら達成感が。

大年のひるさがりより零(こさめ)など 原石鼎

平和な佳い新年を迎えられますよう。


2023年12月30日土曜日

2023年度読んだ本

毎年恒例(でもないが)の勝手ベスト3ランキング。

1位 オーケストラの危機 ロバートJ.フラナガン著 大鐘亜樹訳

2位 世界をこの目で 黒木亮

3位 沈黙のたたかい レジスタンスの記録 ヴェルコール著 森乾訳

「オーケストラの危機」は今年12月に出版されたばかりの著作だ。副題が「芸術的成功と経済的課題」、本の帯には「オーケストラはなぜ黒字を維持することが難しいのか」との問いかけが。オーケストラが赤字?そんなことを想像したことがあっただろうか?華やかな舞台、ある程度常連のクラシックファンがかけつけるであろう、固定客のある「かたい」マーケットと思っていた。しかしそれが異なり、存続の危機にあるオーケストラが多いという。

本書は、「オーケストラの黒字と赤字」「なぜ黒字を維持することが難しいのか」と冒頭からたたみ込んでくる。「コスト病か景気循環か」「オーケストラ財務の諸相」「聴衆を求めて」と問いからみえてきた課題が続く。政府支援、民間支援、寄付財産と統制。単なる批評家の分析で終わらずここからが著者の視点、解決への模索がある。最後に「オーケストラの未来について」。解決策を提言するのが目的ではなく「課題を一発で解決できる方策などは存在しない」とした上で、本書の分析がオーケストラの経済的安定に寄与しうる活動を示唆すると結んでいる。研究書の為、最後まで客観的な姿勢を貫いているが、オーケストラに留まらず音楽を生業とする個人、団体が一度は目を通しておくべき書だろう。

欧米の例は知らないことが多く説得力があったが、では日本もそうなのだろうか?との問いが湧く。それに対しては訳者が12頁もの紙面を割いて、長年の財務の蓄積による鋭い考察を述べている。著作自体も新しい視点の興味深い研究ながら、翻訳者の日本の音楽界への課題意識と解決したいという情熱も、熱量が半端ではない。

著者と訳者が一体となった力作。年末に非常に深い洞察力のある本に出合うことができた。


2023年12月26日火曜日

Moment Musicaux

好きなラフマニノフの曲につけられているタイトル。

ラフマニノフだけではなくシューベルトの曲も有名。日本語に訳すと「楽興の時」。直訳すると「音楽の瞬間」。

昨日はDUOポッキーズの友人が設定してくれて、フランス音楽講座の仲間で飲み会。仕事の話から、来年何弾こう?また集まって音楽会する?といった話まで話題はつきない。こういう時を言葉で表すと楽興の時なのだろう。音楽が奏でられていなくとも、いろいろな曲やアイディアが、まるで対位法のように人それぞれ湧き出でて語られる。音楽も言葉も、人の心の表現の一手段なのだなあとしみじみ感じた楽しいひととき。


来年は一緒にコンサートしようね!と名残惜しんで話したあと、友人からいただいたクッキー。お互いの地元で有名なフランス菓子のお店で買ってきてくれたそう。週末に有難くいただこう。


2023年12月24日日曜日

like a box of chocolates

先輩と窯焼きピッツアの美味しい店へ。

先輩にはいろいろ愚痴を聞いていただいたり、人生の岐路にアドヴァイスをいただいたり。仕事でもご一緒させていただきながらも、多分リラックスできる場で話を聞いてあげようと思っていただいたか、食事をしながら話をする機会をいただいてきた。

殆ど毎回違う店ぶようにしている。今回は初のピッツアリア。4種類のチーズが複雑な味わいのクアトロフォルマッジと、トマトの香り高いマリナーラ。もちもちの生地が美味しい。学生時代のように手でつかんで頬張って、はふはふいいながら食べつつ。いつものように私がいろいろ仕事の話を訴え、先輩は笑いながら聞いていただき、時に鋭く、時に厳しいご意見をいただく。先輩の近況をおききして、触発され、自省する・・・。嬉しく、そして有難い時間だ。

帰り際にいただいたチョコレート。普段甘いものは食べないのだが、エネルギー補給して頑張れよ、と言われた気がして、これは家族と一緒に週末にゆっくり味わっていただくつもり。頭に栄養がいきわたって、次に先輩にお会いする時には「頑張ったな」と言っていただけるように。

Life is like a box of chocolates.  You never know what your're gonna get.

映画「フォレスト・ガンプ」で語られる言葉。頑張れよだけではなく、チョコレートの箱のように何が起こるかわからないのだから、ワクワクした気持ちを忘れるなよ、と言われたのかもしれない。


2023年12月17日日曜日

受賞者コンサート

このコンサートのお蔭で、またベーゼンドルファーを弾くことができた。

ベーゼンドルファーはオーストリア発祥のメーカーで、今はヤマハ傘下だ。「創業以来約190年という長い歴史のなかで5万台程度しか生 産されていない芸術色の強いピアノ」。使用木材の85%が響板でも使用されるスプルースという響き の良い木材で、いわば「ピアノ全体が共鳴する」(「GrandGallery東京」HPより)。中でも、杉並公会堂のモデルは、290インペリアルといわれ、通常の88鍵に加えて9鍵低音が追加されていて、「完全な8オクターブ」を実現している。 追加の倍音、共鳴を作り出すことで、よく「オーケストラのような音」とも譬えられる。

暗譜で弾ける曲をあまり持ちあわせていない私は、ここでもプーランクのノヴェレッテ2番と、フォーレのノクターン2番をまた弾いた。コンクールの時と同じ曲なので、レパートリーの狭さを喧伝するようで忸怩たる思いはあったが、せめて弾き方を少し変えてみた。プーランクは軽妙さをもっと出したくてテンポを無理やり上げた。少し粗くなった部分もあるが、勢いやフレーズ感は以前より出たのでは・・・。フォーレは間違っても良いのでもっと歌って、テンポも揺らしてみた。冒頭から「歌って」と作曲家自ら記載していいる位なので、ま、いいか!と好きなように唄ってみることに。自分の技術力との妥協点をみながらではあるが。

自分の番はさっさと終わったのであとは他の演奏を心置きなく聴くことが出来、また 聴きにきてくれた人と言葉を交わせたこともとても嬉しかった。


妹夫婦からいただいたビタミンカラーの花束。

2023年11月26日日曜日

週末のソロイスツ 2023

街中の紅葉を愛でながら、日仏文化協会汐留ホールへ。

DUOポッキーズの友人に誘っていただき「週末のソロイスツ」という音楽愛好家のコンサートに参加させていただいてきた。彼女がもと職場で立ち上げた音楽コンサート活動の一つで、もう長く続いている。一回切りのイベントではなく、継続には訳がある。立ち上げた彼女の情熱と、職場に音楽好きな仲間が数多くいることと、その音楽を聴きたいという聴衆が集まっているということだ。

可愛らしい女の子が舞台に現れたや否やいきなりヴァイオリン演奏(エルガー「愛の挨拶」)。その次は、また想定を大きく裏切りハープの独奏、合奏へ。そしてこれまた本邦初演?のツェルニー作曲のピアノ超絶技巧版ホルントリオと続く。聴衆はこの一幕から度肝を抜かれたことだろう。

ピアノはスタインウェイ。スタジオはピアノの大きさにあわせて丁度良い大きさ。むき出しの今風の梁にコンクリートの床。モダンな雰囲気。様々な楽器の合奏もあり、ピアノが壁に近く置かれ、反響が気になるかと思ったがそれほどでもなく、良いホールだ。

私はひとつ覚えで、二幕目にプーランクのノヴェレッテ2番とフォーレのノクターン2番を弾かせていただいた。友人は美しい着物をヴェトナム旅行中にスレンダーなラインで作ってもらったという一点もののドレスで登場。日本の作曲家 信時潔の曲を演奏。演奏も服装も日本の作曲家へのオマージュが溢れ感銘深かった。

最後は二人で中田喜直の「日本の四季」から、秋の曲も加えてフィナーレ。弾くのも聴くのも楽しいコンサートだった。

ホール前の紅葉・黄葉。

2023年11月23日木曜日

行きたい処

商談が先週末でひと段落。解放感。

そんな時に高校時代の友人から声をかけてもらって、二人で会社帰りにチョイと一杯。コロナ前は結構そうやって東京駅で待ち合わせておしゃべりすることもあったのだが、そういえばコロナで懇親の場の持ち方も随分変わった。

駅をでてすぐの赤い木枠がお洒落なビストロで。いろいろ話をしているうちに、今 行きたい処ってどこだろう?という話に。彼女をみていると、よく地方に出張に行ってはその地域の特産をお土産に買ってきてもらったことを思い出した。そう。たとえば長崎ではド・ロ神父が外海地区で製麺技術を指導したことを話しながら「ド・ロ様そうめん」を渡してくれたこともあった。

長崎の外海地区に行ってみたい。今までに二度訪問したことがあるが、どちらの時も雨に降られ、一度も晴れた時の海をみたことがない。学生時代に読んだ遠藤周作の「女の一生」と荒天が重なって、記憶の海はいつも灰色で激しい様相だ。いつか、冬 人が少ない時期に、ゆっくりと青く煌めく外海を見に行きたいものだ。


数年前にリフレッシュ休暇で行った時の長崎(早雲山の方からの眺め)。

2023年11月19日日曜日

オーストリアウィーク

初ストリートピアノ。

先週、木枯らしというか冬台風?吹き荒れる中、日墺文化協会主催のオーストリアウィークのイベントとして、ストリートピアノに参加させていただいた。

話があったのは一週間前だが、決まったのは前日の夜で。自分の担当としては最大の需要家が来日、交渉する週のため、平日練習はできないわ、持ち曲は少なく悩みしろもないというか、それでも練習しないといけないのだが、どうしよう、という状態。結局土曜に漸く曲をきめて少し練習して、そのまま当日い突入。

オーストリアウィークだが持ち曲はフランス音楽ばかり。マスネ作 優しく歌うノクターン、歌えや踊れやでサルシッチャ(舞曲)、対比が面白い 黒い蝶、白い蝶、プーランク作 エディット・ピアフを讃えてで「枯れ葉」をイメージ、そのまま ノヴェレッテ2番、フォーレ作 ノクターン2番、最後にオーストリアに敬意を表してイヴァノビッチの「ドナウ川の漣」でしめくくった。

寒くて指が凍えて、予定していた一曲は弾くのをやめた。でも、子供はそばに寄ってきてピアノに触るし、屋台のホットワインを飲んでいた人が近くに寄ってきて気持ちよさそうに身体を音楽に合わせてくれたり。普段と違う聴衆の様子はみていてとても楽しかった。

(写真は日墺文化協会のHPより)

荒天にもかかわらず、気持ちの浮き立つひとときを体験させていただいた。

2023年11月18日土曜日

Thanksgiving

DUOポッキーズの友人と。

中田喜直の連弾 日本の四季から「初秋から秋へ」も加えて練習。今年は初秋なんて季節がなかったが、この曲を聴くと流石に日本の四季の味わい深さを実感する。

連弾練習のあとは楽しみにしていた飲み会。ここ暫くお互いに忙しく、練習はしてもなかなかゆっくりする時間を捻出できず。久しぶりだ。

まずはスパークリングワインで乾杯。彼女には思い出深いオーストリアの生ハム、燻製の帆立と蛸。洋梨のグリーンサラダに、やさしい舌触りの人参と玉葱のポタージュ。これだけでも十分なのに、そのあとのご馳走が。


そして。

どーんと真打登場。彩り美しい秋の野菜に囲まれたスタッフドチキン。米と蕎麦の実とマッシュルームなど、中まで秋の味がタップリ。結構重めのメドックの赤ワインと合うこと。

彼女曰く「もうすぐ収穫感謝祭だからね」。そういえばそうだ。以前も書いたが、日本の収穫祭も、北米の収穫感謝祭も、或いは他の地域でもあるだろう、自然の恵みに対する感謝の気持ち、あらためて思い致すに良い機会。

彼女の料理に込める思いと、お互い健やかに恵みを分かち合えるこのひと時に。有難うございます。

2023年10月29日日曜日

2023年10月22日日曜日

秋薔薇

酷暑で枯れていたベランダの薔薇が咲き始めた。

そんな週末、祥月は11月だが、大口需要家の来日イベントで、11月中旬まで予定がたたなくなったことから、思い切って今週末に父の墓参り。

天気予報に反して暖かい日。ゆっくりと話し合ってきた。

母への土産は秋薔薇。


秋の風 再び薔薇の蕾かな 正岡子規

2023年10月15日日曜日

ぽろたん

酷暑からいきなり秋。

残暑とか初秋という表現をする間もなく。

「ぽろたん」という名前と、「渋皮が簡単に剥ける」というポスターに、今まで買ったこともないのに生栗を買った。ポスターにのっているとおり包丁で切れ目を入れたら大変だったが、家にあった栗剥きナイフを使ったら少し楽にできた。

ポスターに書いてあるとおり、2-3分茹で、剥いて(全てが渋皮ぽろっといかなかったけれど)、昆布と塩で整えて3合のご飯の上へ。息をひそめて待つこと一時間。段々えもいわれぬ優しい栗の香りが。

炊飯器のチャイムがなって10分蒸らしてからゆっくりと蓋を開けると・・・


黄金色のぽろたんが、ほっくりと。

ざっくりご飯に混ぜていただきました。

秋の美味。苦労を補ってあまりある幸せ。


「栗剥けと出されし庖丁大きけれ」高浜虚子

彼も栗剥くには苦労したことでしょう。

美味しいものは今も昔も苦労が必要。

2023年9月24日日曜日

秋の空気

暴力的な残暑から一転して秋の空気に。

今週は何もない週末。泥のように眠った。この夏の諸活動もあるが、気温差もやはりこたえる。

先週の週末はピアノのコンクールに、青柳いづみこ氏のコンサート、そして父方の墓参りと外出続きだった。

父方の墓は下町の寺にあり、父生存の時には毎年家族で墓参りをしていた。父が亡くなってからは、父が希望した樹木の墓地に家族で行くようになり、ここ数年行っていなかった。母が気にするので10年ぶり位にご挨拶に。綺麗に保たれ、寺のまわりは秋の花々が咲き。


秋の花は強い。夏の暑さも乗り越え、なお活き活きと。

2023年8月13日日曜日

ピアノ ピアノ

7月はビジネスもいろいろあったのだが、週末はピアノピアノ。

宇都宮と地元でスタインウェイ、川口でShigeru Kawai、中野でベーゼンドルファー。なんと贅沢な組み合わせ。弾き手として釣り合わないだろうが、音を鳴らせる幸せをかみしめる度合いは誰にも負けない。こういうのを自己満足というのだろうが。誰がどう言おうと幸せは味わった者勝ちだと思う。

ピアノとホールの組み合わせで気づくことも違う。自分の力量よりも華麗にきこえることがあれば、弾いている時よりも聴いている方が大音量に聞こえて指のコントロールを誤ることもある。

でも、多分、どんなピアノであろうとホールであろうと、その源に唄がなければ琴線に触れることはできない。緊張してしまったり、上手く弾きたいと思う気持ちが勝ると、唄はピアノにのっていかない。

メンデルスゾーンが「歌の翼」に君をのせてと調べを綴った。時々その翼があることを忘れてしまう自分がいる。

7月、いろいろなところで弾く機会を得て、あらためて、唄う心、歌の翼がないとなあ、と自省しきり。

川口リリアホールのShigeru Kawai。

2023年6月25日日曜日

スタインウェイとのひととき

贅沢なひとときだった。

訳あって、1時間スタインウェイを独り占め。

いきなり今弾いている曲を弾くのは勿体なくて、バスだけ弾いて響きを楽しんだ。次にメロディだけ弾いて一緒に歌ってみた。そして一緒に合わせてみると華やかで、劇的で、いつもの自分ではないようだ。さしずめ、灰被りの少女がガラスの靴を得て踊り出すかのよう。

とはいえ、消音のピアノにして、マンションのまわりを気にしながら弾いている身としては、身体が縮こまっていて、スタインウェイからしたら不本意なタッチだろう。もっと力を抜いて、自然に鍵盤を鳴らしてみよう。腕をもっと高くから落としてみよう。肩甲骨まわりをストレッチして、もっと上からピアノに触れてみよう。

何度も試してみると、一回だけ音がポーンと伸びた。

だが、一時間はここで終わり。

掴めたと思った音は虚空に消え。

でもこんなもの。日々これだけを極めるべく生活をしている訳ではない自分には、今日の体験はタナボタ。

贅沢なひとときだった。

2023年6月18日日曜日

滋味滋養

明日届きますと友人から。

彼女が大切に育てたじゃがいも達。無事今日届いた。


始めた頃からいただいているが、今年はまたひときわ大きな立派なじゃがいもに。勿論ころころ子供のようなサイズもあり、さしずめじゃがいもファミリーだ。

ここ最近ともに体調を崩している母も、夕食にいただきたいと言ってくれた。嬉しい。蒸して塩をパラパラと、バターをたっぷり乗せる?それともオリーブオイルでこんがり黄金色に焼いてローズマリーの香りづけ、黒胡椒をたっぷりと。ガレット風に焼いてもいいが、シンプルな料理法が一番味をひきたててくれそうだ。

滋味滋養。心も身体も豊かにしてくれる贈り物。有難い。

2023年6月17日土曜日

フランス音楽講座 フォーレ ノクターン 第2番

美しい曲だが、メロディーの心地よさだけでは薄っぺらに聞こえる。

また、美しいメロディーの下には、アクセンとだらけのごつごつした別のテーマが疾走する。ノクターンを「夜の調べ」として優しく甘く捉えようとするとそこで行き止まりになってしまう。

練習不足のまま、それでも泥縄でどうにかまとめて臨んだ講座。通しで弾き終わると、先生は考えながら、若い頃のフォーレがオルガン奏者としても働いたことがあること、バスの大切さなどコメントいただいた。

そうか・・・。サロン風に綺麗なメロディーのみ意識して弾いてしまうと、フォーレが描きたかったハーモニーの移り変わりや、それを主導するバスの動きが表現しきれないということか。

ピアニスティックに綺麗にキラキラ弾くこともできるが、別の道も彷徨ってみよう(できるかどうかは別として)。

パイプオルガン風に弾いたらどうなる?弦楽器、ヴァイオリンとチェロで弾いたらどう引き分けられるだろう。

想像力の冒険。自分次第でいろいろな道に分け入ることができる。それが音楽の楽しみの一つなのだろう。


2023年6月11日日曜日

My way

シナトラが歌う。

But through it all, when there was doubt
I ate it up and spit it out
I faced it all and I stood tall
And did it my way.

全部やった、疑いがある時は
食らい吐き出しもした
全てに向き合い 堂々と立ち向かった
私のやり方でやってきた。


こんな風に言える人がどれだけいるだろう。

同じ職場で背中を追ってきていた先輩が、第二の職場を卒業された。お祝いの日。少し休まれるかと思いきや、国家試験を受ける、次の職場を決めた、矢継ぎ早のお話に、こちらがついていけないほど。

私の好きなこのシナトラの歌、できることなら、まさに先輩のようですねと弾きたいところだったが、そういうシチュエーションでもなく。帰り道そっと口ずさんだ。

2023年6月4日日曜日

青梅落つる嵐哉

天候が荒れると体調が乱れる。

私は鈍感だから良いが、家族は繊細ですぐに影響を受ける。

どんなに日々身体に気を付けていても、努力ではどうにもならない虚しさ。


よもすがら青梅落つる嵐哉 正岡子規

2023年5月28日日曜日

十薬 野生 白い記憶

十種類の薬効があると言われ古くから薬草として使われてきたこの花は?

そして花言葉は「野生」「白い記憶」。

どくだみだ。

今、花(総苞片)が美しい季節。

この時期がくると、工場の品管のマネジャーで、家で花々を育てていて、毎年どくだみ茶を送ってくれた方を思い出す。退職後すぐに亡くなられた。多趣味で好奇心旺盛で、これから第二の人生を謳歌されるのだろうと思っていた矢先だった。

どくだみは「毒」や「痛み」を抑える効果をもつことから「毒痛み」が転じたともいわれる。育てようとすれば、つよく生命力あふれ、駆除しようとすれば難しいらしい。我が家のベランダで育てて、先輩がつくってくれたどくだみ茶をつくり、また母に供したい気もする。その眩しいくらいの強さにあやかりたいと思う。

2023年5月21日日曜日

GW去りて 既に息切れ

テンポ崩さずよく休んだGWのはずだった。

が、それから2週間も経つと、客は来て去り、来て去り。社内の予算業務や人事関連など、アップアップな日々でもう年末のような気分に。

ピアノも練習できず、気持ちよくすごしたGWにもっと詰め込むべきだったかと後悔の念が湧きそうになる。

こういう時はジタバタせずに、深呼吸しよう。そして何か素敵な一瞬を思い出そう。

はなびらの垂れて静かや花菖蒲 高浜虚子

2023年5月14日日曜日

フランス音楽講座 プーランク 3つのノヴェレッテから第2番

今年弾く曲をとうとう決めました。

ここまで決めるのが遅くなったのも今までなかった。GWにとうとう決めて練習をはじめた。プーランクのノヴェレッテ第2番とフォーレのノクターン第2番。2-2コンビ。

はじめにフォーレを決め(これが決めるまで時間かっかった)、それと対照的な曲を選びプーランクのこの曲に。プーランクは手が大きかったので、自分の手のイメージでオクターブ越えの和音をガンガン使うし、譜読みが難しいしで、早い曲は今まで一度も手をだしたことがなかったが、フォーレがエモーショナルなので、テンポ早く、切れが良い、ということで、弾けるかどうかは別として選曲してしまった。

練習はじめたら、予想よりも譜読みで時間がかかり、次にテンポをある程度早める(まだ指示どおりのテンポからほど遠い)のに時間がかかり、今朝は講座直前、5時起きで泥縄練習で臨んだ。

間違いも多かったが、テンポを上げて拍感を意識したら、どうにか曲の雰囲気は少しだせるようになった。弾くまで緊張で身体がカチコチになったが、リズミカルでユーモア?に富んだ曲想に助けられどうにか最後までいけてほっとしたところ。

ところで、今日は母の日。昔、紙でピンクの花をつくって贈ったことを思い出した。母は子供達がつくったへんてこな花を喜んで本当に長くもっていてくれた。

2023年5月7日日曜日

キャリアコンサルタント グループアプローチ基本技法

 GWの最終日。今日は資格継続の研修会に参加。

キャリアコンサルタントで日本ファシリテーション協会会員でもある講師によるレクチャーと実践ということで興味もあって選択した。

ジョン・ケラーによる学習意欲を高めるARCSモデル(Attention, Relevance, Confidence, Satisfaction)を具体的にどのように使ってグループ研修に使うかという部分が特に参考になった。研修という場がケーススタディとしてとりあげられた訳だが、結構このモデルを使って相手の注意を惹きつけるという意味では、若手育成のグループディスカッションでも、需要家相手のプレゼンにも通じるところがある。勿論、目的の違いをよく認識した上での使い分けが必要だが、普遍的な要素もあり使えそう。また、参加者のキャリアも年齢も多様性があり、それぞれがつくったプランの発表も勉強になった。また参加したいと思わせる内容だった。



2023年5月5日金曜日

さわやかな夏と 連弾

GW恒例の連弾練習。今年も実行。

中田喜直の「日本の四季」から二曲をまた練習。季節も汗ばむ陽気で、春と夏に因んだ二曲だが、もう気分は夏である。

「さわやかな夏とむし暑い夏と」は上手く弾ければ劇的な効果があるものの、最後のフィナーレの「雨から台風に」が特に難しい。プリモが7連符、セカンドが6連符と音価もあわないし、各々が不協和音。現代音楽らしい「心地よくない」楽譜だ。下手をするとただ単に「合っていない」と思われてしまう。ここを地道にメトロノームにかけて何十回も練習した。「どうやっても合わない」楽譜どおりに弾けるようになってからメトロノームを外してお互いの音を聞き合って拍子感を合わせる。そうすると「合う」のだ。楽譜どおり「合わない音の連なり」になるのだ。そうすると数段曲の効果があがってこれらの不協和音がドラマティックに盛り上がり、最後プリモが一人で弾く三小節が嵐の去った静けさを印象付けられることに。恒例のスポコン練習はお互いにノリノリで終わった。

終わった後は楽しみのプチ打ち上げ。良い季節だからと彼女の家のルーフバルコニーで暮れなずむ空の下、おしゃべりとスパークリングワインを楽しんだ。手を伸ばせば背の高いユーカリの木に触れる。風にさやさやと葉が鳴るのを聴きながら暗くなるまで話の赴くまま談笑。


母にとお土産にいただいた花束。数年前に彼女にいただいて我が家に根付いたローズゼラニウムと共に。

2023年5月3日水曜日

3年ぶりのランチ会

GW前半、気持ちも浮き立つ初日。高校時代の友達と。

コロナ期間、皆で会うことができなかったが、この程再会。友人が手配してくれた美味しいシーフードのレストランにて。近況を語り合うだけで先ず1時間。会えなかった3年分を話そうとすればとても2時間程度では終わらない。今回残念ながら参加できなかった人も含めて、近々の再会を約して別れた。

後で高校を訪ねた人達から校舎の写真が送られてきた。赤いレンガのモダンな建物で、全教室にバルコニーがある面白い設計。卒業してから長い月日が経ったが、写真をみるだけで、その校舎に通った日々の心の動きを思い出す。赤いレンガに蔦が絡まり美しく、そんな校舎が好きだったこと。礼拝堂での時間が後から思えば精神的な支柱となっていたこと。小さな図書館で本を探して彷徨う時の喜び。学校帰りに禁じられていた甘味屋で友達とおしゃべりに興じた懐かしい光景。

友達から、知人が作っているというガーゼのハンカチと、「懐かしいでしょ」とトラピストのガレットをいただいた。このフランスの菓子は学園祭の時に人気NO.1で売り切れることもあった。帰ってすぐにあの頃学園祭の手伝いに駆り出されていた母といただいた。昔と同じにほろっと優しい生地にバターの豊かな香りが広がった。


2023年4月23日日曜日

歓迎

一気に需要家の来日が増えた。

ここ暫く毎週必ず客との会議、会食、工場見学対応。コロナ前に戻ったというよりは、コロナでせきとめられていた分、堰を切ったかのようだ。季節も春で良い時期だし。日本をよく知る客は梅雨になる前に、そして自分が夏季休暇に入る前に狙いすまして4-5月に殺到する。

今は藤の花が綺麗だそうだから、工場見学のあとみられるところは?と聞く客も。桜の花には遅いが、日本らしい花をみたいらしい。

そういえば藤の花には「歓迎」という意味の花言葉もあるらしい。アポ調整が大変だが、わざわざ日本まで来て下さるのだから、歓迎、歓迎。

紫の富士の花をばさと分くる風ここちよき朝ぼらけかな 与謝野晶子

2023年4月16日日曜日

フランス音楽講座 弾き合い会 そして「陽はまた昇る」

昨年に続いて講座の年度締め括りの弾き合い会。

デュオポッキーズの友人が幹事を務めてくださって、今年はスタジオを借りてスタインウェイで行うことに。プログラムもフランス音楽、日本の作曲家がメインの興味深いプログラム。

このフランス音楽講座が、入野賞コンクールで内外の才能を発掘し日本の作曲家育成、発展に寄与された入野禮子先生の音楽研究所の一講座であることから、昨年亡くなられた入野先生にお聴かせしたいと、今回日本の作曲家の曲も積極的に取り入れた。

好きな曲をもちよって並べてみると、なんと一曲だに重複していない。先生の、そして受講生の多様性がほのみえるよう。。ドビュッシー、ラヴェルは勿論、バロックのラモーの曲も。日本でいえば中田喜直、山田耕作と誰もが小学生の時から名前をきいた作曲家から、入野義朗、入野禮子先生、矢代秋雄、信時潔といった不勉強な私は今まで聴いたことのない方々の曲まで、本当に刺激的だった。

私自身は湯山昭「三つの自由画」から1.きつつきの歌 2.貝がらのヨット 3.ラッシュ ラッシュ ラッシュ そして連弾はデュオポッキーズの友人と中田喜直の二曲。講座にもっていった時は「湯山先生はとにかくエネルギッシュ。そんなやわらかく弾かないで。」とのコメントをいただいた。また、矢代秋雄氏については、現代音楽が日本に急に取り込まれた時代に「音楽には歌がなければいけない」との思いをもたれていたことなども補足説明いただき、その頃の音楽界の雰囲気に少し触れられた気がした。もっと日本の作曲家についても知って、弾けるようになりたい。

弾き合い会の地、受講生から先生に日頃の感謝を込めてワインをサプライズ・プレゼント。会の幹事を快く引き受けていただいた友人が選んだワインは、ココワイナリーの「陽はまた昇る」。ココワイナリーは私の高校時代からの友人から教えてもらって知った。日本屈指のワイナリーだ。足利の地にこころみ学園が昭和44年に設立され、学園の関係者がワイナリーを昭和55年につくり、今年はワインづくり30年目になるそうだ。

フランス音楽講座も開設29年から30年目の節目に向かって。日本人作曲家をメインにした引き合い会で、現代日本作曲界を牽引されてきた方々を偲び、同じように日本という土壌で西洋の生きる糧であるワインを根付かせようとしたワイナリーの産物をプレゼントに選ばれた友人の心意気の素晴らしさ。


2020年ものかはわからないが、「陽はあた昇る」の写真。ココワイナリーさんのHPから借用。

2023年4月8日土曜日

風いで来りけり

というよりも、春の嵐が続いている。

激しい風に、雨に、気圧の変化も激しく体調崩している方も多いのでは。この時期、正直 鉄の心臓の自分はさておき、気候が家族の体調に与える影響は大きい。

出張、外出、出社が急に増え、コロナ下のように家族の健康を見守る時間がとれず心配な時間が増えた。コロナ収束の合図と共に経済活動は戻ってきているのだろう。在庫だの特殊要因を見誤らないようにしつつも方向としては良い方向。だがプライヴェートではメリット、デメリットあり、なかなか単一の評価には落ち着かない。

デュオポッキーズの友人と、連弾練習。フランス音楽講座の一年の総集編、弾き合い会目指してラストスパート。またスポコン練習と、その後地元でナポリ風ピッツアとワインで景気づけ。練習を重ねるごとに、お互いにやりたいことが増え、音の対話も増え、曲にストーリーができてくる。こうやって一緒に曲を仕上げていくというのは、とても楽しい。贅沢な時間だ。

友人宅に咲いていた小手毬をいただいた。

小でまりの花に風いで来りけり 久保田万太郎

2023年4月2日日曜日

季節は廻り 筍

もう4月。

こんなにきつかった年度末も数年振りだった。

仕事では3月の人事異動を受け業務がまた増え引継ぎを受けながらの期末対応をしつつ、コロナ対策収束を受け海外の客が待ってましたと来日し、急にリアル会議や会食が連日連夜。

プライヴェートでは不覚にも風邪をひいてしまい、花粉症とのダブルパンチ。多分WEB含め、会議ではしゃべっているのか、くしゃみしているのか、まわりの人には判じきれなかったろう。加えて出社したり外出したりテレワークしたりで、ほぼ毎日重いPCと資料を持ち歩いた結果、とうとう右手の小指のつきゆびと手首の捻じりをやってしまい、右手のピアノの練習はほぼ一か月できなかった。フランス音楽講座もピアノレッスンも全部キャンセル。

散々な3月が終わり、心機一転して4月を迎えたいもの。はぁ。

今朝一か月以上ぶりに恐る恐る早朝散歩にいったところ、なんといつの間にか桜も葉桜になりかけ。季節の移り変わりもみえていなかった。

そんな中で、唯一3月に春を感じたのは。筍を二本いただいていて、それを母に料理してもらった時。母も体調悪かった3月だが、その時だけは少し調子持ち直していて、歓声をあげて一緒に筍の香りを胸いっぱいかいだ(私はあまりわからなかったが・・・)。

一本目。まずは王道の筍ご飯。我が家のベランダ菜園の「山椒の葉」をこの時とばかり摘んで添える。旬の甘い香りと複雑なハーブのインパクトが、忘れられない一膳となる。

下の少しかたいであろう部分はさつま揚げと出汁でやさしい味のさっと煮。二本目は、茹でて。熱々をマヨネーズにつけていただく贅沢さ。根本の少しかたい部分だけはきんぴらに。旬の筍をいただくと思うだけで、待ちわびていた春がきたことを実感できる気がして、この頃から漸く体調が戻ってきたような気がする。

箸あげて筍飯とつぶやきぬ 加藤楸邨


わかるなぁ。この気持ち。こんな短い文字数で共感を呼び起こす文字の力に讃嘆。

2023年3月5日日曜日

雛祭 春を待ちながら 連弾

雛祭の日。DUOポッキーズの友人と中田喜直の「日本の四季」の連弾練習。

1曲目の「春がきて、桜が咲いて」と4曲目の「さわやかな夏とむし暑い夏と」を再度さらった。ここ暫く「初春」をいきなり通り越して春爛漫な暖かさの日々も続き、本物の春を待ち望む気持ち募り、特にこの1曲目を弾くと心が軽く浮き上がるようだ。

とはいえ、この曲は「春」といって思い浮かぶ柔らかさや暖かさは描写されておらず、冒頭からメゾフォルテで始まり、桜が風に舞う景色はもの哀しい短調の和音を、しかもスタッカートで弾くように指示されている。全体的に日本人が思う春よりも楽譜上は強い書き方がされている。一方で冒頭の哀しい曲想は「桜横丁」という中田喜直の声楽曲からきており、透き通るような女性ソプラノで失恋を思わせる歌詞を謳った珠玉の小曲。

「想い出す 恋の昨日 君はこうここにいないと・・・春の宵 さくらが咲くと 花ばかり さくら横ちょう」

ピアノ連弾曲としては、やや強めの指示の楽譜に従うか、儚い恋への思いに曲調に合わせるか、いまひとつどのように弾いたらよいか迷う曲だ。4月の弾きあい会まではもう少し時間があるので二人で話し合ってつくっていきたい。

恒例のスポコン練習が終わると楽しい飲み会。友人には手伝いもしないで幾品か手土産をもっていくだけで申し訳ないのだが、また心に残るおもてなしをいただいた。

たてていただいた御茶(彼女は御茶の先生でもある)と湯島の梅の和菓子。ロゼのスパークリングで乾杯したあとは、緑濃いアスパラガスのお浸し。葡萄色のホタルイカ。黄金に光る鰆の西京焼きに薄紅色のスモークサーモン。蛤の潮汁に春の色とりどりの散らし寿司。そう、今日は雛祭。懐石料理のような逸品ばかり。

目を転じれば、彼女のお母様がつくられた雛飾りが。


この雛飾り三段全てで手のひらよりも小さいのに。人形のそれぞれの表情の活き活きと個性的なこと。愛らしいフォルム。美しい色彩。

母の雛 最も古りて 清くあり 原石鼎

2023年2月26日日曜日

「365人の仕事の教科書」 「正射必中」 背中を追って

思うところあってこの本(藤尾秀明著)を読み始めている。

1年かけて読むつもりはないので速読中。その中で「正射必中 ジェローム・シュシャン/ゴディバジャパン社長」の章は何度か繰り返し読んでいる。

5年間で売り上げが2倍になった。『目標はプレッシャーにならないように、5%像の予算を立てる。けれど、新商品は何にするか、どこに出店するか・・・・といった毎日枚に資やることは一所懸命ベストを尽くす。・・・弓道には「正射必中」という言葉があります。正しくいられた矢は必ず的に当たるという意味です。・・・雑念が入ると、的には当たりません。ただ、無心になるためには並々ならぬ努力が必要です。』

売り上げが2倍とは凄まじい数字をさらっと書いている。その後の言葉はさらっと聞けば当たり前の言葉だが、実行・実現は難しい。仕事上でもたとえば趣味のピアノの演奏ですら難しい。雑念が入らない状態、無心に集中できるまで仕事も芸も精神ももっていくのは難しい。

四半世紀前、人事から営業に異動になって、誰も営業の仕方を教えてくれる人がおらず、迷っていた時、自分で師を勝手に探した。以来、同じ仕事をすることは残念ながらなかったが、この人のような営業になりたいと背中を追い続けている先輩がいる。日々の営業作業に埋没する人達と一線を画して独自にマーケティングを行い、論理的に客に訴求するツールを黙々と蓄積し、客に足繫く通う。客の信頼を得たからこそそのニーズを捉えることも、また時に情に訴えて説得することもできる。上述の「正射必中」の言葉に会った時、先輩の背中が思い浮かんだ。

先輩が新たな職場に移られた後も年に2-3回はお会いしていたものだが、昨年はあいてしまい先週一年ぶりにお会いした。東北地方のシーフードが売りの美味しいイタリアンで。変わらず、相手の言葉を良く聞き、反芻しながら核心を衝いた質問をされたり。客であろうと後輩であろうと穏やかな物腰も変わらない。


夢中で背中を追ってここまできたけれど、自分は先輩から学んだことをどこまで実行できているだろう、教えていただいたことを他の人に伝えられているだろうかと自問自答している。

2023年2月19日日曜日

杉並公会堂のベーゼンドルファー 再会

あるリサイタルの一部に参加する機会があった。

マスネ「黒い蝶」「白い蝶」、ドビュッシー「ノクターン」の3曲を弾くことにした。あのベーゼンをまた弾ける喜びに、どんなに綺麗な音がするだろう、バスは伸びやかに響くだろうか、などわくわくしすぎて、あろうことかあがってしまった。

椅子はいつもの椅子と違って高さ調節をハンドルで行うタイプで、通常前に回せば高くなるところがそうなっておらずやり直し。舞台にマスクをつけていってしまい、一曲目を弾いているうちに息が苦しくなって二曲目との合間にはずしたり。だがここに及んで開き直った。憧れのベーゼン。泣いても笑ってもあと触れられるのは数分。楽しもうではないか。

白い蝶は細かいパッセージが苦手だが、もう構わない。白い羽のように軽く、スワロスキーのビーズのようにきらきら光るアルペジオを鳴らしたい。ドビュッシーのノクターンは対照的に最初は海の底から妖気が立ち昇るような不気味さ。そのあとに続くは意外にも鈴のような少女のソプラノとデュエットを織りなすまだ若い青年の歌。ドビュッシーに似合わない甘い盛り上がりは、もちろんベーゼンの豊かなバスで。

ドビュッシーが完成させられなかったオペラがこの若書きのピアノ曲に既に表現されている。

最後の音が消えて、私の番はもう終わり。

このピアノでまた弾きたいがために、また今年も練習をしていくのだろう。


友人にいただいた花束。庭で丹精を込めて育てられた椿と梅。光をいっぱいに浴びて生命力の眩しいこと。

2023年2月5日日曜日

連弾練習 中田喜直 「日本の四季」から

4月に日本の作曲家の引き合い会に参加することに。

DUOポッキーズの友人と相談し、連弾とソロを弾くことにした。連弾は中田喜直の「日本の四季」に収められている「春がきて、桜が咲いて」「さわやかな夏とむし暑い夏と」の二曲を予定。まだソロ曲は決めていないが、忙しい彼女と練習できる機会が殆どないので、まずは連弾の練習を優先。金曜夜に彼女の家で特訓。

一曲目はいきなり上手く合い、余裕の笑みもこぼれた。しかし問題は二曲目。いきなり彼女と私が練習してきた「夏」の曲が異なることが判明。私は2曲目の「五月晴れと富士山」を、彼女は4曲目の「さわやかな夏とむし暑い夏と」と思っていたのだ。「春と夏ね」で分かった気がしていたのがいけなかった。もっといえば春の次は夏だろうと安易に2曲目と疑わなかった私が悪かった・・・。ということで難しい4曲目だが初見で挑戦。案の定、雪崩をうって瓦解してしまった。

気を取り直してつきあっていただき、二時間の特訓が終わる頃にはどうにか目途がつき、ほっと一安心した。

終わればあとは新年会だ!とばかり、また料理上手な彼女のお手製の品々をご馳走に。節分に因み色鮮やかな旬の刺身たっぷりの手巻き寿司。やさしい味付けの鶏と大根の煮物。春を先取りしたようなみずみずしい水菜とじゃこのたっぷりサラダ。仕事の話を聞いていただいたり、彼女の博士論文の進捗をお聞きしたり。

なかでも盛り上がった話題は子供の頃に読んだ本に表現されていた料理へのオマージュ。メアリー・ポピンズの木苺ジャムとマフィン、秘密の花園のヨークシャー・プディングやカラント入りバンズ。大きくなって実際に食べてみて想像していたイメージと違っていた菓子、やっぱり美味しかった料理。彼女の読書量は勿論、どの本に書かれていたこの料理、と正確な記憶力にも脱帽。


話ながら台所の上の棚からひょいと持ってきて見せてくれたのがこの本。「秘密の花園のクックブック」。Amy Cotler著作 Festrival社 写真はAmazonより拝借。
私は岩波文庫で読んだので英語版を見るのははじめてだったが、表紙も中の料理本の挿絵も懐かしい感じがして欲しくなってしまった。食事をご一緒するたびに、都度違う共通の興味が見つかることってなかなかないこと。とても嬉しい。



2023年1月22日日曜日

大寒に

昨日今日は大寒。雪は降らないまでも身を切るような寒さ。

寒い時には・・・。散歩に行って早歩き。トックリのセーターを着こんで。飴色に煮込んだ大根をあつあつで食べるのも嬉しい。いやいや、冬は千切り大根。湯豆腐でしょう。生姜を絞り込めば香りも高く身体の中から温まる。夜になったら湯たんぽにたっぷり熱湯を入れて。寝る前にはゆっくり温めたホットミルクに少し蜂蜜とブランデーを垂らして。


大寒に 入らむと町の 空古るぶ 長谷川双魚

2023年1月15日日曜日

フランス音楽講座 マスネ 白い蝶

昨年もっていった「白い蝶」を再度もっていった。

拍感が崩れていることのご指摘を受け、弾き方や表現までは至らず。自分にがっかりしたものの、弾いていてしっくりこない、曲の理解が浅い気がしていて漠然とした自信のなさを感じていただけに、課題がクリアになってほっとした。

8分の9拍子、一般的とはいえないがマイナーな拍子とまでは言えない、でも譜面からだけではわからない、弾いてみないとわからない、不思議な音価が並んでいて、だまし絵のような曲でもある。メトロノームで練習重ねていたにもかかわらず、自分のカウントが8分の9拍子になっていなかったのだなと講座でのご指摘で納得。今は指の動きや表現というよりも、自分の中で正しい拍感で歌えるように練習中。当初考えていた「柔らかさ」メインよりも、小さい白い蝶が小刻みにひらひらと飛ぶ姿を描きたいと思いだした。

そうなると、一緒に弾く予定の「黒い蝶」は別のニュアンスで対極をなすように修正しなければ。こちらはもっと大きな黒い蝶が妖しくゆらゆらと舞う感じにしよう。

同じ2曲を練習しなおしている訳だが、昨年とはまた解釈を変えたら、どう弾いたらいいか、考えたり工夫したりするのが楽しい。正解というものがなくて、でも自分にとって腑に落ちる解釈を考え出し、自分の技量の中でどうにか実現すること。仕事も同じことがいえる訳だが、ピアノはアマチュアだからこそ思う存分自分の好きにやれるのが幸せだ。


今年はあたたかいせいか、もう紅梅が咲き始めている。春が近いと思ってはいけないのだろうが。

2023年1月3日火曜日

波もなし

昨年はいろいろあった。今年は穏やかであってほしい。このブログを読んでくださっている方々皆さまにとっても。

下旬を除けば昨年の師走は、コロナの行動制限もなくなり、業務上は必要により、プライヴェートは対面を心待ちにしてお会いできた方が多かった。人との語らいがあらためて味わい深い楽しみだった。

仕事上お世話になった技術の先輩の退職祝い。今年配属された新人や若手を誘って少人数での忘年会。業務上の関係者とのお疲れ様会。 

そしてDUOポッキーズの友人との恒例の忘年会。今年を公私ともに振り返り、来年の抱負を語らうのも楽しい。いつもは来年弾く連弾曲をあれやこれやと話し合うものだが、今回は即決。いづれこのブログでもご報告の予定。

初日さす 硯の海に 波もなし 正岡子規