2023年2月26日日曜日

「365人の仕事の教科書」 「正射必中」 背中を追って

思うところあってこの本(藤尾秀明著)を読み始めている。

1年かけて読むつもりはないので速読中。その中で「正射必中 ジェローム・シュシャン/ゴディバジャパン社長」の章は何度か繰り返し読んでいる。

5年間で売り上げが2倍になった。『目標はプレッシャーにならないように、5%像の予算を立てる。けれど、新商品は何にするか、どこに出店するか・・・・といった毎日枚に資やることは一所懸命ベストを尽くす。・・・弓道には「正射必中」という言葉があります。正しくいられた矢は必ず的に当たるという意味です。・・・雑念が入ると、的には当たりません。ただ、無心になるためには並々ならぬ努力が必要です。』

売り上げが2倍とは凄まじい数字をさらっと書いている。その後の言葉はさらっと聞けば当たり前の言葉だが、実行・実現は難しい。仕事上でもたとえば趣味のピアノの演奏ですら難しい。雑念が入らない状態、無心に集中できるまで仕事も芸も精神ももっていくのは難しい。

四半世紀前、人事から営業に異動になって、誰も営業の仕方を教えてくれる人がおらず、迷っていた時、自分で師を勝手に探した。以来、同じ仕事をすることは残念ながらなかったが、この人のような営業になりたいと背中を追い続けている先輩がいる。日々の営業作業に埋没する人達と一線を画して独自にマーケティングを行い、論理的に客に訴求するツールを黙々と蓄積し、客に足繫く通う。客の信頼を得たからこそそのニーズを捉えることも、また時に情に訴えて説得することもできる。上述の「正射必中」の言葉に会った時、先輩の背中が思い浮かんだ。

先輩が新たな職場に移られた後も年に2-3回はお会いしていたものだが、昨年はあいてしまい先週一年ぶりにお会いした。東北地方のシーフードが売りの美味しいイタリアンで。変わらず、相手の言葉を良く聞き、反芻しながら核心を衝いた質問をされたり。客であろうと後輩であろうと穏やかな物腰も変わらない。


夢中で背中を追ってここまできたけれど、自分は先輩から学んだことをどこまで実行できているだろう、教えていただいたことを他の人に伝えられているだろうかと自問自答している。

2023年2月19日日曜日

杉並公会堂のベーゼンドルファー 再会

あるリサイタルの一部に参加する機会があった。

マスネ「黒い蝶」「白い蝶」、ドビュッシー「ノクターン」の3曲を弾くことにした。あのベーゼンをまた弾ける喜びに、どんなに綺麗な音がするだろう、バスは伸びやかに響くだろうか、などわくわくしすぎて、あろうことかあがってしまった。

椅子はいつもの椅子と違って高さ調節をハンドルで行うタイプで、通常前に回せば高くなるところがそうなっておらずやり直し。舞台にマスクをつけていってしまい、一曲目を弾いているうちに息が苦しくなって二曲目との合間にはずしたり。だがここに及んで開き直った。憧れのベーゼン。泣いても笑ってもあと触れられるのは数分。楽しもうではないか。

白い蝶は細かいパッセージが苦手だが、もう構わない。白い羽のように軽く、スワロスキーのビーズのようにきらきら光るアルペジオを鳴らしたい。ドビュッシーのノクターンは対照的に最初は海の底から妖気が立ち昇るような不気味さ。そのあとに続くは意外にも鈴のような少女のソプラノとデュエットを織りなすまだ若い青年の歌。ドビュッシーに似合わない甘い盛り上がりは、もちろんベーゼンの豊かなバスで。

ドビュッシーが完成させられなかったオペラがこの若書きのピアノ曲に既に表現されている。

最後の音が消えて、私の番はもう終わり。

このピアノでまた弾きたいがために、また今年も練習をしていくのだろう。


友人にいただいた花束。庭で丹精を込めて育てられた椿と梅。光をいっぱいに浴びて生命力の眩しいこと。

2023年2月5日日曜日

連弾練習 中田喜直 「日本の四季」から

4月に日本の作曲家の引き合い会に参加することに。

DUOポッキーズの友人と相談し、連弾とソロを弾くことにした。連弾は中田喜直の「日本の四季」に収められている「春がきて、桜が咲いて」「さわやかな夏とむし暑い夏と」の二曲を予定。まだソロ曲は決めていないが、忙しい彼女と練習できる機会が殆どないので、まずは連弾の練習を優先。金曜夜に彼女の家で特訓。

一曲目はいきなり上手く合い、余裕の笑みもこぼれた。しかし問題は二曲目。いきなり彼女と私が練習してきた「夏」の曲が異なることが判明。私は2曲目の「五月晴れと富士山」を、彼女は4曲目の「さわやかな夏とむし暑い夏と」と思っていたのだ。「春と夏ね」で分かった気がしていたのがいけなかった。もっといえば春の次は夏だろうと安易に2曲目と疑わなかった私が悪かった・・・。ということで難しい4曲目だが初見で挑戦。案の定、雪崩をうって瓦解してしまった。

気を取り直してつきあっていただき、二時間の特訓が終わる頃にはどうにか目途がつき、ほっと一安心した。

終わればあとは新年会だ!とばかり、また料理上手な彼女のお手製の品々をご馳走に。節分に因み色鮮やかな旬の刺身たっぷりの手巻き寿司。やさしい味付けの鶏と大根の煮物。春を先取りしたようなみずみずしい水菜とじゃこのたっぷりサラダ。仕事の話を聞いていただいたり、彼女の博士論文の進捗をお聞きしたり。

なかでも盛り上がった話題は子供の頃に読んだ本に表現されていた料理へのオマージュ。メアリー・ポピンズの木苺ジャムとマフィン、秘密の花園のヨークシャー・プディングやカラント入りバンズ。大きくなって実際に食べてみて想像していたイメージと違っていた菓子、やっぱり美味しかった料理。彼女の読書量は勿論、どの本に書かれていたこの料理、と正確な記憶力にも脱帽。


話ながら台所の上の棚からひょいと持ってきて見せてくれたのがこの本。「秘密の花園のクックブック」。Amy Cotler著作 Festrival社 写真はAmazonより拝借。
私は岩波文庫で読んだので英語版を見るのははじめてだったが、表紙も中の料理本の挿絵も懐かしい感じがして欲しくなってしまった。食事をご一緒するたびに、都度違う共通の興味が見つかることってなかなかないこと。とても嬉しい。