贅沢なひとときだった。
訳あって、1時間スタインウェイを独り占め。
いきなり今弾いている曲を弾くのは勿体なくて、バスだけ弾いて響きを楽しんだ。次にメロディだけ弾いて一緒に歌ってみた。そして一緒に合わせてみると華やかで、劇的で、いつもの自分ではないようだ。さしずめ、灰被りの少女がガラスの靴を得て踊り出すかのよう。
とはいえ、消音のピアノにして、マンションのまわりを気にしながら弾いている身としては、身体が縮こまっていて、スタインウェイからしたら不本意なタッチだろう。もっと力を抜いて、自然に鍵盤を鳴らしてみよう。腕をもっと高くから落としてみよう。肩甲骨まわりをストレッチして、もっと上からピアノに触れてみよう。
何度も試してみると、一回だけ音がポーンと伸びた。
だが、一時間はここで終わり。
掴めたと思った音は虚空に消え。
でもこんなもの。日々これだけを極めるべく生活をしている訳ではない自分には、今日の体験はタナボタ。
贅沢なひとときだった。
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