2023年6月25日日曜日

スタインウェイとのひととき

贅沢なひとときだった。

訳あって、1時間スタインウェイを独り占め。

いきなり今弾いている曲を弾くのは勿体なくて、バスだけ弾いて響きを楽しんだ。次にメロディだけ弾いて一緒に歌ってみた。そして一緒に合わせてみると華やかで、劇的で、いつもの自分ではないようだ。さしずめ、灰被りの少女がガラスの靴を得て踊り出すかのよう。

とはいえ、消音のピアノにして、マンションのまわりを気にしながら弾いている身としては、身体が縮こまっていて、スタインウェイからしたら不本意なタッチだろう。もっと力を抜いて、自然に鍵盤を鳴らしてみよう。腕をもっと高くから落としてみよう。肩甲骨まわりをストレッチして、もっと上からピアノに触れてみよう。

何度も試してみると、一回だけ音がポーンと伸びた。

だが、一時間はここで終わり。

掴めたと思った音は虚空に消え。

でもこんなもの。日々これだけを極めるべく生活をしている訳ではない自分には、今日の体験はタナボタ。

贅沢なひとときだった。

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