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2023年4月2日日曜日

季節は廻り 筍

もう4月。

こんなにきつかった年度末も数年振りだった。

仕事では3月の人事異動を受け業務がまた増え引継ぎを受けながらの期末対応をしつつ、コロナ対策収束を受け海外の客が待ってましたと来日し、急にリアル会議や会食が連日連夜。

プライヴェートでは不覚にも風邪をひいてしまい、花粉症とのダブルパンチ。多分WEB含め、会議ではしゃべっているのか、くしゃみしているのか、まわりの人には判じきれなかったろう。加えて出社したり外出したりテレワークしたりで、ほぼ毎日重いPCと資料を持ち歩いた結果、とうとう右手の小指のつきゆびと手首の捻じりをやってしまい、右手のピアノの練習はほぼ一か月できなかった。フランス音楽講座もピアノレッスンも全部キャンセル。

散々な3月が終わり、心機一転して4月を迎えたいもの。はぁ。

今朝一か月以上ぶりに恐る恐る早朝散歩にいったところ、なんといつの間にか桜も葉桜になりかけ。季節の移り変わりもみえていなかった。

そんな中で、唯一3月に春を感じたのは。筍を二本いただいていて、それを母に料理してもらった時。母も体調悪かった3月だが、その時だけは少し調子持ち直していて、歓声をあげて一緒に筍の香りを胸いっぱいかいだ(私はあまりわからなかったが・・・)。

一本目。まずは王道の筍ご飯。我が家のベランダ菜園の「山椒の葉」をこの時とばかり摘んで添える。旬の甘い香りと複雑なハーブのインパクトが、忘れられない一膳となる。

下の少しかたいであろう部分はさつま揚げと出汁でやさしい味のさっと煮。二本目は、茹でて。熱々をマヨネーズにつけていただく贅沢さ。根本の少しかたい部分だけはきんぴらに。旬の筍をいただくと思うだけで、待ちわびていた春がきたことを実感できる気がして、この頃から漸く体調が戻ってきたような気がする。

箸あげて筍飯とつぶやきぬ 加藤楸邨


わかるなぁ。この気持ち。こんな短い文字数で共感を呼び起こす文字の力に讃嘆。

2020年5月30日土曜日

WASSHA グラホ ジェフのお悩み相談所 今日の季節の果実は枇杷

STAY HOMEということで、今迄見なかったテレビもよく見るようになった。「ながら」ではあるが。

その中で幾つか興味深かった番組。

土曜の朝は、多分一週間で一番幸せな気分で目が覚める。すきな音楽番組を聴きながらしみじみとゆったりとした気持ちを味わう。その延長線上で家事をしながら何の気なしに流していたら、面白い話になって、一旦掃除も中断して見入ってしまった。

一柳良雄が問う日本の未来▽ベンチャーが切り拓く日本の未来 東大発ベンチャー編2
ゲストは、各務茂夫氏(東京大学)、 秋田智司氏(WASSHA株式会社)
各務先生のベンチャーの意義も説得力あるものだったが、このWASSHAという会社がやっていることが面白かった。

「社会課題解決とビジネスの成功を両立させる」「ソーシャルベンチャー起業」で、お金や機械を寄付しておしまい、というチャリティではなく(それも立派なことなのだろうが)、電気供給の少ないタンザニアで、LEDランタンの貸し出しという形で、同社も、現地の貸し出し者(キオスク)も、利用者もそれぞれに利があるから事業を継続できるというもの。

こういう仕組みをつくって「便利さ」「豊かさ」がまわっていくという、まさに今迄相反するものとして語られることが多い「社会課題解決とビジネスの成功を両立させる」例がこういう発想で実現されていったのかと実に興味深かった。

岩城紀子【カンブリア宮殿】日本一美味しいを集めた「グランドフードホール」
グランドフードホール自体知らずにおり、流し見ている中で、社長がレモンタルトを試食しているのがあまりに美味しそうだったのでこちらも思わず手をとめて見てしまったパターン。

それだけならただのグルメ番組なのだが、後半で岩城さんが経営難の食品メーカーや職人に知恵を貸す場面がでてくる。それは商売に繋がるからという合理的な動機として語られなかった。「なくなったら嫌だから」「いいものを食べていると気持ちも豊かになるんじゃないかと思う。」という感情的な言葉がでてきたのに驚いた。そして「買い物は残したい商品への“投票”」というコメント。そうか。こういう言葉で表すことで、買い物に新たな意義づけ、価値が付加されるのか、とマーケティング力(りょく)の高さに賛嘆。言葉は力だ。

NHK Eテレ「ドキュランド選」 「ロボットのお悩み相談室」
「AI=人工知能を持つ小型ロボットのジェスが一般家庭に住みつき、家族のお悩み解決にあたる。夫婦関係や子どもの教育方針、はては恋愛指南まで…人間はどう反応する?」との実験風ドキュメンタリー。これも今流行りのAI凄いね番組かと思い、ながらで聴いていたが、結構このジェスに人々が質疑していくうちに、相談内容の本質が見えてきて驚いて結局最後までみてしまった。

このジェスの容姿が、所謂人間型ロボットであり、目の表情が変わるところに一つミソがあると思う。これがパソコンであれば「機械」に向かって相談事をするのは人にとって障害が高いのでは。「人間型」でかわいい顔つき、目に表情が何種類か表れることで、「準人間」として話す相手として許容範囲に入るのだと。質問が切り込みすぎて人間に対してであれば「あなたの知ったことか」と憤然と座をたつところでも、ジェス相手なら、今度は「機械だから仕方がない」と自分で納得させ顔をこわばらせながらも大人な対応をする。

私個人は、結構キャリアコンサルティングで習った相手に話しをさせる質問をきちんとジェスはインプットされていて「あなたはどう思う?」「そう聴いてどう感じた?」、感情がないと認識しているロボットにだからこそ語れる感情や本音もあるかもしれないと思った。高度なコンサルティングは今はできなくとも、感情的にならない、合理的な選択肢を提供する、幅広い知識(たとえばファイナンシャルプランナー的、社会労務士的など)を検索して伝える、など使い方次第で広がる用途だと思った。

一方で、番組では、ジェスが相談者のメールやネット履歴、SNSを検索して、そこから相談者の問題を探るという切り口が何度か使われていたが、個人情報をそのように使えることの怖さを教えるのには良いが、相談には使って欲しくないと強く拒否反応を感じた。いづれにせよ、興味深く、もうAIは何らかの形で私達と繋がることは避けられないのだと考えさせられた番組だった。

ところで、今日の季節の果実は枇杷。こちらも九州の親戚からいただいた。我が家では母が枇杷で果実酢を。妹は、てりも鮮やかなシロップ漬けをつくって。私は早速頬張って。爽やかな甘さは今の季節にぴったり。


2020年5月17日日曜日

九州の親戚から絹さやが送られてきた。いつものように郵便局のエクスパックに採れたてをぱんぱんに詰めてくれて。


筋とりしようとテーブルに広げると、あおあおとした植物の匂いがふわっと立ち昇り、一緒に紫色の花も押し花のように一緒にでてきた。

では、ついでにこちらもまだ旬と言えるか?春キャベツ。きゅうりと大根とざくざくっと切って塩もみのサラダ。


かりかり ぱりぱり しゃくしゃく。
この季節の野菜はとにかく、いきがいい。

生きるを丸ごととりこもう。

葉脈に水音立てて春キャベツ 
村さと子

2020年3月21日土曜日

季節の匂い

先日、新聞か何かで、五感の中で一番記憶にのこりやすいものは何か?味か、音か、感触か、映像か?との問いがあった。

音、と考えたのだが、間違い。匂いだそうだ。

五感の中で嗅覚だけが、海馬に直接情報を送ることができるからだと。

今日は母が、はりきって、朝から煮物。それぞれの匂いがあまりにやさしく、ふともれ聴こえた自分の好きなメロディーに心ゆすぶられると同じ位、気持ちが鷲掴みにされた。


母の時々の贅沢。それは、伊吹いりこを使うこと。出汁をとって冷蔵庫に大切に。それをとりだしたからには、今日の煮物は力こもったものでしょう。

そう。まだ高いけれど、漸く手をだせるかも、という野菜といえば。

筍。

前日に糠で茹でて、冷ましたものを出汁にいれる。


ほんの少し醤油をたらし。アイヴォリー色のやわやわとした筍が染まっていく。

この間の、季節の根のものを煮る時の、むせるような匂い。ああ。

最後に、これも昨日母が狙って、選って買った季節物。
丁寧に筋も灰汁抜きもした・・・。


そう。蕗。

あおあおとして、あお臭い匂い。噛めばほろ苦いのがわかっているけれど、まずは目で愛でる。

ひさびさに糸ひく蕗を食べにけり
山口誓子

我が家は春の匂いでいっぱい。