2021年10月31日日曜日

ショパンと映画

ショパン・コンクールに触発されて、思い出した映画がある。

「戦場のピアニスト」

第75回アカデミー賞で監督賞、脚本賞、主演男優賞の3部門を受賞た作品。ショパンの夜想曲20番が印象的に流れる。実在のユダヤ人ピアニスト(シュピルマン)の実話であり、それだけに現実味があり心に重く残る。ドイツ軍将校に命じられて、この曲を弾く。それまで逃げて生き延びることにのみ心を向けていたピアニストが、弾き始めた途端にこの曲を奏でたいという衝動に突き動かされる場面は忘れることができない。そしてこの夜想曲20番以外に、この場面に合う曲は考えられない。耳について離れない曲だ。

映画の主人公のシュピルマンの方は、その演奏や人生について、この映画公開後は脚光を浴びることが多くなった。

Szpilman この人の弾く夜想曲20番(YOUTUBE)。

戦場のピアニストを救った将校 一方、公開後すぐには脚光を浴びることがなかった、このドイツ人将校の方も本になったようだ。読んでみたい。


「グリーン・ブック」
こちらは、第91回アカデミー賞で作品賞・助演男優賞・脚本賞の3部門を受賞。黒人のエリートピアニストと白人のナイトクラブの運転手が共に人種偏見の強いアメリカ南部を演奏旅行するという設定。このピアニス(ドン・シャーリー)とも実在の人物で2歳からピアノを始め、ロシアのレニングラード音楽院で学び、18歳ではボストン・ポップス・オーケストラでデビュー。この他、音楽や典礼芸術、心理学の博士号を取得、8ヵ国に堪能だったともいわれ、作品中では「ドク(ター)」と呼ばれた。
作中、ショパンの曲は、演奏旅行中の場末のバーで弾いた「木枯らし」のエチュード。黒人であるが故に、個人の技量で判断されない悔しさを直接間接に受けた彼が弾く。ショパンのエチュードの中でもとびきり難しいこの曲を難なく弾く孤独な姿。だが、弾く喜び、聴衆の興奮、といったことの感じられない、木枯らしのような心象風景と結びついた曲想だ。

「天使にショパンの歌声を」
最後は、こちらもエチュード、別名「別れの曲」を使ったこの作品。
ケベック映画賞受賞6部門の作品。優れた音楽教師で寄宿舎のシスターと、寄宿舎の女子生徒たちの物語。経営難で音楽学校が閉鎖されそうになり、シスターと生徒が立ち上がる。反抗心旺盛の女子生徒が、最後にコンクールで弾く曲がこの曲。

結局、現実は厳しく、生徒たちの頑張りむなしく音楽学校は閉鎖されてしまう。この女子生徒はコンクールに挑戦することで新たな舞台に旅立つ。別れの曲の、少し懐古的で美しいメロディが、この映画の締めくくりに彩りを添える。(写真はKADOKAWAのHPより借用)


2021年10月30日土曜日

第18回ショパン・コンクール

2位反田氏、4位小林氏と日本人が二人入賞。日本国中が速報に沸いた。

経済紙の代名詞の日経ですら、お!と思うタイトル。現地でコンクールを取材していた青柳いづみこ氏に電話インタビューし、彼女の表現を見出しに使った。

演歌のようなショパン

急なインタビューに青柳氏からそのままでてきた言葉のようだが、キャッチーなタイトルでマスコミとしては成功だったのでは。ショパン・コンクールといういかにもクラシックの世界と、日本人には親しみやすい演歌というジャンルのミスマッチが多くの人の目を奪った。きっと琴線に触れた演奏だったのだろうとの期待感で、多くの人がYOUTUBEに向かったのではないだろうか。

こんなに楽しく弾いていいんだ!

実際、青柳いづみこ氏のHPを拝見すると、右側に表示されるTwitterで、今回のコンクールの経緯が、多角的に速報されていて、臨場感いっぱい。あとでゆっくりまた戻って読ませていただくつもりだが、そのレポートの中でも、心わくわくしたのはこの記事。

>>元気が出たショパン・コンクール

>>ピアノって、こんなに楽しく弾いていいんだ!
>>審査員までもが耳を洗われた(との談話が)マルティン・ガルシア・ガルシア。


いつかはゆっくり本選のはじめからYOUTUBEで自分の耳を便りにコンテスタントの音楽をききたいものだが、今はまだなかなか時間がとれない。今回は、青柳いづみこ氏の記事に沿ってきいてみようと思う。

ところで、ショパン・コンクールの裏事情。以前テレビで、本選に残る方々に選んでもらうピアノメーカーの熾烈な戦いをレポートする番組を観て、メーカーの営業としてはとても興味をもった。一度アマチュアコンクールで「次に弾くピアノを選んでもいいですよ」と言われたことがあったのだが、限られた時間 種々のピアノを弾いて試すか、これというピアノを絞って最終判断するか迷ったものだ。人によっては至福の表情を浮かべいろいろなピアノを試弾する人も、はじめから決めたピアノで自分の曲の感触を確かめる人もいて様々だった。私は余裕なく、後者。でも今考えるといろいろなピアノを試弾しておけばよかったかも。今回の優勝者はイタリアのFazioliを使ったそうだ。netでみると、メーカー指定を途中で変えてもいいとか悪いとか、ルールに混乱があったようだ。これは、コンテスタントにとっては大きな条件変更で、ええ!!!という人もいただろう。それだけピアニストにとっては「自分」の弾き方、技量も大切だが、「ハード」とも言えるピアノや響きを司るホールも大切。ホールは変えられないから、「自分」以外はこの「ハード」の選択も深く考えるところがあったろう。何故今年はFazioliだったのか。これを探るのも今回の楽しみの一つ。






2021年10月17日日曜日

最近読んだ本

緊急事態宣言が解かれ、家の近くの図書スペースも久しぶりに解禁となった。ここは、住人が読まなくなった本を置いていき、また勝手に借りていくことができる、フリーな場所。この気儘な感じが気に入っている。

ふらっと寄ってみて、目を惹いた3冊を借りてきた。自分でも、ああ、こういう本に惹かれたんだとそれ自体が発見で面白い。

「逆境からの仕事学」姜尚中 NHK出版新書

冒頭から「仕事人生そのものである」と始まる。この人にとって、「仕事とは社会への入場チケット」だと定義する。それは、「在日である私は、両親や在日のコミュニティーによって庇護されて生きるのではなく、一般人として社会の中で生きていきたいと思っていました。」「社会の中で自分の居場所がほしいからでした。」

自分に言い聞かせるように諄々と記す言葉に共感した。私にとっても、生きる為のお金を稼ぐ手段であると同時に、「仕事の中にある社会的な使命」を果たすことで、この社会に参加していると実感したいのだ、と思い至った。なんとはなしに思っているものの、入社した時、転職を考えた時ぐらいしか再認識しないことを、あらためて考えさせられた。他にも、この不確実な世の中を生き抜いていくためには「人文知」が必要とし、新しい知識の得られる「生もの」と、古くから醸成され生き続けている「干物」を読書していくことの大切さも記されていて、もっと本を読みたくなった。

「鋼のメンタル」百田尚樹 新潮新書

映画となった「海賊と呼ばれた男」ぐらいしか読んだことがなかったが、タイトルがキャッチーで手にとった。内容的には人生の先輩達が今までにも記してきたものなのだろうが、表現が興味をそそるのだろう。「金属疲労をおこすな」では「きつい仕事にも泣き言や不平を一言も漏らさず、もくもくと仕事を続ける人が。そういう人に限ってある日突然、倒れたり、不調を訴えたり、過労死してしまったりすることが多いのです。逆に、すぐに泣きごとや不平を口にする人は、以外に倒れたりしません。」「メンタルを免振構造にせよ」では、「人生の暴風雨に対して、男らしく弱音を吐かずに立ち向かうという姿勢はかっこいいものです。でも、皆さん、そのせいで心の深いところで金属疲労を起こしたり・・・ないようにしてください。そのためにはメンタルを免振構造にすることです。ショックなことがあれば、がんと跳ね返すよりも、一旦それを受けてへこみましょう。」なんでもないと自分をだましていると、ショックが見えないところで尾をひいてしまう、というもの。カラッとした言い方が、そうだな、悩むよりそうしてみるかと思わせるあたり、放送作家出身の「相手を捉まえる」技が光っている。

「松浦弥太郎の仕事術」松浦弥太郎 朝日文庫

「自分の行いが、人の役に立つ。自分の中にある何かが、人に幸せを与える。簡単に言えば、仕事の目的とはこういうものだと思います。仕事とは個人の楽しみではなく、自部が社会とかかわっていく営みだと考えています。」「音楽でも芸術でも料理でも同じこと。・・・社会の中で人の役に立たなければ、いくら一生懸命にしたところで、ひおりよがりな自己満足に過ぎません。」「その人の後ろの『五十人』を意識する・・・どんな人の背後にも、最低五十人の人間関係があるという話です。働くうえで、常にこの意識をもつことは大切です。この意識があれば、人を立て、相手の儲けを考える重要性が、より深く理解できます。」いろいろなところで講演やエッセイが掲載され「暮らしの手帳編集長」として知っていたが、フリーランスとしての仕事が長く、編集長という組織の中で仕事をすると思ってもいなかったそうだ。基本一人で自立して仕事をすることと、大勢の人をまとめていく仕事、大きな変化の中で、一貫して大切にしてきたことを記したエッセイ。姜さんの本と通ずる価値観で、この二冊の本には、社会人としてもっと意味を考えて丁寧な仕事をしなければいけないと考えさせられた。

銀杏の実。朝の散歩で顔をあげて空を仰いで発見。

2021年10月16日土曜日

秋の風はオリーブのように苦いではないか

フランシス・ジャムというバスク地方生れの詩人が詠んだそうだ。(詩人石田瑞穂さんのHPより)

オリーブは苦いのだろうか。私達が一番よく使うオリーブ製品は多分オリーブオイル。そこから苦いというイメージはない。

今年も知人から、庭でできたのでといってオリーブの実を分けていただいた。


昨年は言われた通りにすぐ処理したが、今回は生の実を齧ってみた。ジャムの表す通り、本当に苦かった・・・。

この苦さは渋みからくるそう。その渋みは実を虫などから護るためのポリフェノール。

オリーブの薬効とされる、疾病や老化を防ぐ抗酸化作用を持ったポリフェノールではあるが、渋すぎて食べられないのでは勿体ない。さて、これから知人からあわせていただいた苛性ソーダを使って、渋抜きをしよう。

2021年10月10日日曜日

おりおりそそぐ秋の雨

と曲が始まるのが、「四季の雨」文部省唱歌

私自身知らず、今朝は晴れて強い日差しが重い雲間からレンブラントライトを注いでいたのに、ちょっと目を離したすきに、もう驟雨。その雨を見ながら母が口ずさんだのがこの曲。

春、夏、と歌ってそして秋。

おりおりそそぐ秋の雨、木の葉木の実を野に山に、色様々に染めなして、おりおりそそぐ秋の雨。


期末の忙しさでダウンしている間に、緊急事態宣言解除、岸田内閣発足、関東地方でマグニチュード5強の地震、といろいろなことが起きていた。

そんな慌ただしい中、先週は久しぶりに先輩とゆっくり話がでいる機会に恵まれた。かれこれ20年近く、営業経験ゼロの時から、彼の背中を眺め、半歩でも追いつきたいと思ってきた人だ。マーケティングや営業戦略を立案することも、そしてこれが大事なのだがそれを実行もできる方で、よく話を聞かせていただいた。最近は難関資格にもチャレンジされている由。最近金属疲労ならぬ、勤続疲労で士気が落ちていたが、先輩と話しをするだけで刺激をいただきまた頑張ろうという気になるもの。