2023年4月16日日曜日

フランス音楽講座 弾き合い会 そして「陽はまた昇る」

昨年に続いて講座の年度締め括りの弾き合い会。

デュオポッキーズの友人が幹事を務めてくださって、今年はスタジオを借りてスタインウェイで行うことに。プログラムもフランス音楽、日本の作曲家がメインの興味深いプログラム。

このフランス音楽講座が、入野賞コンクールで内外の才能を発掘し日本の作曲家育成、発展に寄与された入野禮子先生の音楽研究所の一講座であることから、昨年亡くなられた入野先生にお聴かせしたいと、今回日本の作曲家の曲も積極的に取り入れた。

好きな曲をもちよって並べてみると、なんと一曲だに重複していない。先生の、そして受講生の多様性がほのみえるよう。。ドビュッシー、ラヴェルは勿論、バロックのラモーの曲も。日本でいえば中田喜直、山田耕作と誰もが小学生の時から名前をきいた作曲家から、入野義朗、入野禮子先生、矢代秋雄、信時潔といった不勉強な私は今まで聴いたことのない方々の曲まで、本当に刺激的だった。

私自身は湯山昭「三つの自由画」から1.きつつきの歌 2.貝がらのヨット 3.ラッシュ ラッシュ ラッシュ そして連弾はデュオポッキーズの友人と中田喜直の二曲。講座にもっていった時は「湯山先生はとにかくエネルギッシュ。そんなやわらかく弾かないで。」とのコメントをいただいた。また、矢代秋雄氏については、現代音楽が日本に急に取り込まれた時代に「音楽には歌がなければいけない」との思いをもたれていたことなども補足説明いただき、その頃の音楽界の雰囲気に少し触れられた気がした。もっと日本の作曲家についても知って、弾けるようになりたい。

弾き合い会の地、受講生から先生に日頃の感謝を込めてワインをサプライズ・プレゼント。会の幹事を快く引き受けていただいた友人が選んだワインは、ココワイナリーの「陽はまた昇る」。ココワイナリーは私の高校時代からの友人から教えてもらって知った。日本屈指のワイナリーだ。足利の地にこころみ学園が昭和44年に設立され、学園の関係者がワイナリーを昭和55年につくり、今年はワインづくり30年目になるそうだ。

フランス音楽講座も開設29年から30年目の節目に向かって。日本人作曲家をメインにした引き合い会で、現代日本作曲界を牽引されてきた方々を偲び、同じように日本という土壌で西洋の生きる糧であるワインを根付かせようとしたワイナリーの産物をプレゼントに選ばれた友人の心意気の素晴らしさ。


2020年ものかはわからないが、「陽はあた昇る」の写真。ココワイナリーさんのHPから借用。

2023年4月8日土曜日

風いで来りけり

というよりも、春の嵐が続いている。

激しい風に、雨に、気圧の変化も激しく体調崩している方も多いのでは。この時期、正直 鉄の心臓の自分はさておき、気候が家族の体調に与える影響は大きい。

出張、外出、出社が急に増え、コロナ下のように家族の健康を見守る時間がとれず心配な時間が増えた。コロナ収束の合図と共に経済活動は戻ってきているのだろう。在庫だの特殊要因を見誤らないようにしつつも方向としては良い方向。だがプライヴェートではメリット、デメリットあり、なかなか単一の評価には落ち着かない。

デュオポッキーズの友人と、連弾練習。フランス音楽講座の一年の総集編、弾き合い会目指してラストスパート。またスポコン練習と、その後地元でナポリ風ピッツアとワインで景気づけ。練習を重ねるごとに、お互いにやりたいことが増え、音の対話も増え、曲にストーリーができてくる。こうやって一緒に曲を仕上げていくというのは、とても楽しい。贅沢な時間だ。

友人宅に咲いていた小手毬をいただいた。

小でまりの花に風いで来りけり 久保田万太郎

2023年4月2日日曜日

季節は廻り 筍

もう4月。

こんなにきつかった年度末も数年振りだった。

仕事では3月の人事異動を受け業務がまた増え引継ぎを受けながらの期末対応をしつつ、コロナ対策収束を受け海外の客が待ってましたと来日し、急にリアル会議や会食が連日連夜。

プライヴェートでは不覚にも風邪をひいてしまい、花粉症とのダブルパンチ。多分WEB含め、会議ではしゃべっているのか、くしゃみしているのか、まわりの人には判じきれなかったろう。加えて出社したり外出したりテレワークしたりで、ほぼ毎日重いPCと資料を持ち歩いた結果、とうとう右手の小指のつきゆびと手首の捻じりをやってしまい、右手のピアノの練習はほぼ一か月できなかった。フランス音楽講座もピアノレッスンも全部キャンセル。

散々な3月が終わり、心機一転して4月を迎えたいもの。はぁ。

今朝一か月以上ぶりに恐る恐る早朝散歩にいったところ、なんといつの間にか桜も葉桜になりかけ。季節の移り変わりもみえていなかった。

そんな中で、唯一3月に春を感じたのは。筍を二本いただいていて、それを母に料理してもらった時。母も体調悪かった3月だが、その時だけは少し調子持ち直していて、歓声をあげて一緒に筍の香りを胸いっぱいかいだ(私はあまりわからなかったが・・・)。

一本目。まずは王道の筍ご飯。我が家のベランダ菜園の「山椒の葉」をこの時とばかり摘んで添える。旬の甘い香りと複雑なハーブのインパクトが、忘れられない一膳となる。

下の少しかたいであろう部分はさつま揚げと出汁でやさしい味のさっと煮。二本目は、茹でて。熱々をマヨネーズにつけていただく贅沢さ。根本の少しかたい部分だけはきんぴらに。旬の筍をいただくと思うだけで、待ちわびていた春がきたことを実感できる気がして、この頃から漸く体調が戻ってきたような気がする。

箸あげて筍飯とつぶやきぬ 加藤楸邨


わかるなぁ。この気持ち。こんな短い文字数で共感を呼び起こす文字の力に讃嘆。

2023年3月5日日曜日

雛祭 春を待ちながら 連弾

雛祭の日。DUOポッキーズの友人と中田喜直の「日本の四季」の連弾練習。

1曲目の「春がきて、桜が咲いて」と4曲目の「さわやかな夏とむし暑い夏と」を再度さらった。ここ暫く「初春」をいきなり通り越して春爛漫な暖かさの日々も続き、本物の春を待ち望む気持ち募り、特にこの1曲目を弾くと心が軽く浮き上がるようだ。

とはいえ、この曲は「春」といって思い浮かぶ柔らかさや暖かさは描写されておらず、冒頭からメゾフォルテで始まり、桜が風に舞う景色はもの哀しい短調の和音を、しかもスタッカートで弾くように指示されている。全体的に日本人が思う春よりも楽譜上は強い書き方がされている。一方で冒頭の哀しい曲想は「桜横丁」という中田喜直の声楽曲からきており、透き通るような女性ソプラノで失恋を思わせる歌詞を謳った珠玉の小曲。

「想い出す 恋の昨日 君はこうここにいないと・・・春の宵 さくらが咲くと 花ばかり さくら横ちょう」

ピアノ連弾曲としては、やや強めの指示の楽譜に従うか、儚い恋への思いに曲調に合わせるか、いまひとつどのように弾いたらよいか迷う曲だ。4月の弾きあい会まではもう少し時間があるので二人で話し合ってつくっていきたい。

恒例のスポコン練習が終わると楽しい飲み会。友人には手伝いもしないで幾品か手土産をもっていくだけで申し訳ないのだが、また心に残るおもてなしをいただいた。

たてていただいた御茶(彼女は御茶の先生でもある)と湯島の梅の和菓子。ロゼのスパークリングで乾杯したあとは、緑濃いアスパラガスのお浸し。葡萄色のホタルイカ。黄金に光る鰆の西京焼きに薄紅色のスモークサーモン。蛤の潮汁に春の色とりどりの散らし寿司。そう、今日は雛祭。懐石料理のような逸品ばかり。

目を転じれば、彼女のお母様がつくられた雛飾りが。


この雛飾り三段全てで手のひらよりも小さいのに。人形のそれぞれの表情の活き活きと個性的なこと。愛らしいフォルム。美しい色彩。

母の雛 最も古りて 清くあり 原石鼎

2023年2月26日日曜日

「365人の仕事の教科書」 「正射必中」 背中を追って

思うところあってこの本(藤尾秀明著)を読み始めている。

1年かけて読むつもりはないので速読中。その中で「正射必中 ジェローム・シュシャン/ゴディバジャパン社長」の章は何度か繰り返し読んでいる。

5年間で売り上げが2倍になった。『目標はプレッシャーにならないように、5%像の予算を立てる。けれど、新商品は何にするか、どこに出店するか・・・・といった毎日枚に資やることは一所懸命ベストを尽くす。・・・弓道には「正射必中」という言葉があります。正しくいられた矢は必ず的に当たるという意味です。・・・雑念が入ると、的には当たりません。ただ、無心になるためには並々ならぬ努力が必要です。』

売り上げが2倍とは凄まじい数字をさらっと書いている。その後の言葉はさらっと聞けば当たり前の言葉だが、実行・実現は難しい。仕事上でもたとえば趣味のピアノの演奏ですら難しい。雑念が入らない状態、無心に集中できるまで仕事も芸も精神ももっていくのは難しい。

四半世紀前、人事から営業に異動になって、誰も営業の仕方を教えてくれる人がおらず、迷っていた時、自分で師を勝手に探した。以来、同じ仕事をすることは残念ながらなかったが、この人のような営業になりたいと背中を追い続けている先輩がいる。日々の営業作業に埋没する人達と一線を画して独自にマーケティングを行い、論理的に客に訴求するツールを黙々と蓄積し、客に足繫く通う。客の信頼を得たからこそそのニーズを捉えることも、また時に情に訴えて説得することもできる。上述の「正射必中」の言葉に会った時、先輩の背中が思い浮かんだ。

先輩が新たな職場に移られた後も年に2-3回はお会いしていたものだが、昨年はあいてしまい先週一年ぶりにお会いした。東北地方のシーフードが売りの美味しいイタリアンで。変わらず、相手の言葉を良く聞き、反芻しながら核心を衝いた質問をされたり。客であろうと後輩であろうと穏やかな物腰も変わらない。


夢中で背中を追ってここまできたけれど、自分は先輩から学んだことをどこまで実行できているだろう、教えていただいたことを他の人に伝えられているだろうかと自問自答している。

2023年2月19日日曜日

杉並公会堂のベーゼンドルファー 再会

あるリサイタルの一部に参加する機会があった。

マスネ「黒い蝶」「白い蝶」、ドビュッシー「ノクターン」の3曲を弾くことにした。あのベーゼンをまた弾ける喜びに、どんなに綺麗な音がするだろう、バスは伸びやかに響くだろうか、などわくわくしすぎて、あろうことかあがってしまった。

椅子はいつもの椅子と違って高さ調節をハンドルで行うタイプで、通常前に回せば高くなるところがそうなっておらずやり直し。舞台にマスクをつけていってしまい、一曲目を弾いているうちに息が苦しくなって二曲目との合間にはずしたり。だがここに及んで開き直った。憧れのベーゼン。泣いても笑ってもあと触れられるのは数分。楽しもうではないか。

白い蝶は細かいパッセージが苦手だが、もう構わない。白い羽のように軽く、スワロスキーのビーズのようにきらきら光るアルペジオを鳴らしたい。ドビュッシーのノクターンは対照的に最初は海の底から妖気が立ち昇るような不気味さ。そのあとに続くは意外にも鈴のような少女のソプラノとデュエットを織りなすまだ若い青年の歌。ドビュッシーに似合わない甘い盛り上がりは、もちろんベーゼンの豊かなバスで。

ドビュッシーが完成させられなかったオペラがこの若書きのピアノ曲に既に表現されている。

最後の音が消えて、私の番はもう終わり。

このピアノでまた弾きたいがために、また今年も練習をしていくのだろう。


友人にいただいた花束。庭で丹精を込めて育てられた椿と梅。光をいっぱいに浴びて生命力の眩しいこと。

2023年2月5日日曜日

連弾練習 中田喜直 「日本の四季」から

4月に日本の作曲家の引き合い会に参加することに。

DUOポッキーズの友人と相談し、連弾とソロを弾くことにした。連弾は中田喜直の「日本の四季」に収められている「春がきて、桜が咲いて」「さわやかな夏とむし暑い夏と」の二曲を予定。まだソロ曲は決めていないが、忙しい彼女と練習できる機会が殆どないので、まずは連弾の練習を優先。金曜夜に彼女の家で特訓。

一曲目はいきなり上手く合い、余裕の笑みもこぼれた。しかし問題は二曲目。いきなり彼女と私が練習してきた「夏」の曲が異なることが判明。私は2曲目の「五月晴れと富士山」を、彼女は4曲目の「さわやかな夏とむし暑い夏と」と思っていたのだ。「春と夏ね」で分かった気がしていたのがいけなかった。もっといえば春の次は夏だろうと安易に2曲目と疑わなかった私が悪かった・・・。ということで難しい4曲目だが初見で挑戦。案の定、雪崩をうって瓦解してしまった。

気を取り直してつきあっていただき、二時間の特訓が終わる頃にはどうにか目途がつき、ほっと一安心した。

終わればあとは新年会だ!とばかり、また料理上手な彼女のお手製の品々をご馳走に。節分に因み色鮮やかな旬の刺身たっぷりの手巻き寿司。やさしい味付けの鶏と大根の煮物。春を先取りしたようなみずみずしい水菜とじゃこのたっぷりサラダ。仕事の話を聞いていただいたり、彼女の博士論文の進捗をお聞きしたり。

なかでも盛り上がった話題は子供の頃に読んだ本に表現されていた料理へのオマージュ。メアリー・ポピンズの木苺ジャムとマフィン、秘密の花園のヨークシャー・プディングやカラント入りバンズ。大きくなって実際に食べてみて想像していたイメージと違っていた菓子、やっぱり美味しかった料理。彼女の読書量は勿論、どの本に書かれていたこの料理、と正確な記憶力にも脱帽。


話ながら台所の上の棚からひょいと持ってきて見せてくれたのがこの本。「秘密の花園のクックブック」。Amy Cotler著作 Festrival社 写真はAmazonより拝借。
私は岩波文庫で読んだので英語版を見るのははじめてだったが、表紙も中の料理本の挿絵も懐かしい感じがして欲しくなってしまった。食事をご一緒するたびに、都度違う共通の興味が見つかることってなかなかないこと。とても嬉しい。