2020年11月29日日曜日

ショパン ノクターン 第21番

 久しぶりのフランス音楽講座出席。今日弾いたのは、ショパン ノクターン 第21番 遺作。作曲年代は諸説あるそうで、若い時期との解釈もあったようだが、自筆譜の五線紙の種類から推定して晩年のものだという評価が今は主流になっているらしい。

民謡のような単純な旋律が繰り返し、短時間で終わる。強弱記号も殆ど記載がない。指使いにもこだわりぬいたショパンらしくなく指定もない。若かりし日かと言われればそう捉えることもできなくもない。

だが、これが最晩年のものだとすると。しかも推敲版もないようだ。ショパンといえば、推敲や即興で多くの版が存在することで有名だ。疲れて推敲もできなかったのか。もうどうでもいいと思ったのか。自分の心境にはこのままがいいのだと敢えてそのままにしたのか。譜面も、作曲時の状況も、後世に残っている情報が他の曲に比べて少なく、解釈によって弾き方も大きく異なるのではないか。


講座では、デュオポッキーズの友人がジョン・ノイマイヤー振り付けでローザンヌバレエコンクールで踊られていると皆に共有してもらった。画像をみると優美で、ショパンはバレエの為に作曲したのではないかと思うくらいだ。先生からはバレエ音楽でのピアノ伴奏の難しさの話まで発展したコメントもあり、様々な観点で鑑賞できた幸せなひとときだった。

2020年11月23日月曜日

調律

 絶対音感が数少ない自慢できる能力だったのに、突発性難聴を患ってから、微妙に、そして半音、今は全音ずれて聞こえるようになった。以前は調律があっていないと気持ち悪くなったものだが、今は鈍感になったのか耳が悪いのか、気が付かないことが多くなった。

家族に「音が悪い」と言われてはじめて気が付き、調律をお願いした。前回から1年半経っていた。20年近くお願いしている調律師さんは元気いっぱいできてくれて安心した。だが、彼女曰く、コロナ禍で来てほしくないという人が多く、仕事は激減したという。ワクチンできるまで調音しないのでしょうかねえ・・・と笑っていたが、本心は笑うどころではないのだろう。

今年は毎年うけているアマチュアコンクールも実行されるかわからず、また、7月から仕事が純増して練習できなかったのですっかり忘れていたが、夏にやはり実行しますと連絡がきた。悩んだが、その時自分が弾きたくて練習していた曲で出ようと思い応募した。コンクール用の曲と思って選曲しなかったのは初めでだ。技術的にそれほど難しくはないショパン ノクターン第19番、プーランク 15の即興曲第12番等を弾くことにした。

杉並公会堂のベーゼンドルファー、紀尾井ホールのスタインウエイ。私が弾きたかったノクターンはピアノに助けられて美しい音だった(自分の技量は別)。一次は淡々と弾いてその音に驚きもう一度ベーゼンで弾きたいと願った。二次は緊張して音の美しさに気づく余裕がなかった。本選では冒頭に弾いた前奏曲で暗譜落ちをしたので、入選は望めないと欲を捨て去った途端、ピアノの音がちゃんと聞こえてきた。メロディーを歌うこと。本当はヴァイオリンのようにずっと繋げたいけれどそんなにピアノだから音がのびない。人が歌うように、息が続く限りはのばして、息つぎの時に間が空くように。そして、美しい単旋律は、聞こえたらそれだけで耳をひきつけられるような。

自分の理想と自分の技量は違ったけれど、でも今年は終わったあと、好きな曲を弾けた満足感が残った。


友人にいただいた花束。もう二か月近く美しい造形を魅せてくれている。調律したてのピアノの上で、喜んでくれているような。



2020年11月22日日曜日

星につなげ

数か月ぶりに先輩にお会いできた。同じ職場に同じ頃に配属され、20年、その仕事振りをそばで拝見してきた。幸せなことだ。

Hitch your wagon to a star. R.W.Emerson

中学生の時に英語の格言とかで習った覚えがある。その時の和訳は

汝の馬車を星につなげ

より高いところを目指しなさいという意味だと教えられた。

私にとっては、見習いたいけれど、どれだけ年月をかけてもかなわない、遠い星という意味でぴったりの言葉だ。

母に頂きもの。その包み紙自体の美しさに目を瞠った。デザイン、紙質、色合い。

季節にあったシンプルでそぎ落とした絵柄。いやはや、仕事だけでなく審美眼もかないません。

2020年11月21日土曜日

ルドゥーテの絵葉書

 またWEB飲み会しよう!と言いつつ、一か月超体調を崩していたので、友人からのお誘いにも一二行の返信をするのがやっとだった。すると程なく彼女から手紙が。ローランサンの美しい切手が貼られた封筒を開けると、フランスの宮廷画家ルドゥーテの美術展のちらしと美しい薔薇の絵葉書が一枚。時空を超えたお花見のおすそ分けと。

何か言う訳でもないのに見舞いの気持ち感じられ、心嬉しく、枕元に置き眺めた。仕事をしては横になることが多い一か月だったが、生命力のおすそ分けをいただき、ようよう治癒したような気がする。

恥ずかしながらこの宮廷画家の名前もしらず、しげしげと見ると、茎や葉に生えた細かな棘さえ柔らかに見えて実は痛そうで、リアリティに驚かされた。マリー・アントワネットやナポレン皇妃ジョセフィーヌの知遇を得て、植物図譜を描いたという。有名な音楽家の人生と重ねれば、モーツアルトの3つ下、ブラームス幼少の頃にまでかかる感じか。宮廷音楽も華やかなりし頃に描かれた職人気質の高度な技の芸術品。

2020年11月6日金曜日

祥月

 夢見る人よ、

おそらくはすべてみな、

眠れるならむ。

百田宗治 「夢見る人よ」から