2020年11月23日月曜日

調律

 絶対音感が数少ない自慢できる能力だったのに、突発性難聴を患ってから、微妙に、そして半音、今は全音ずれて聞こえるようになった。以前は調律があっていないと気持ち悪くなったものだが、今は鈍感になったのか耳が悪いのか、気が付かないことが多くなった。

家族に「音が悪い」と言われてはじめて気が付き、調律をお願いした。前回から1年半経っていた。20年近くお願いしている調律師さんは元気いっぱいできてくれて安心した。だが、彼女曰く、コロナ禍で来てほしくないという人が多く、仕事は激減したという。ワクチンできるまで調音しないのでしょうかねえ・・・と笑っていたが、本心は笑うどころではないのだろう。

今年は毎年うけているアマチュアコンクールも実行されるかわからず、また、7月から仕事が純増して練習できなかったのですっかり忘れていたが、夏にやはり実行しますと連絡がきた。悩んだが、その時自分が弾きたくて練習していた曲で出ようと思い応募した。コンクール用の曲と思って選曲しなかったのは初めでだ。技術的にそれほど難しくはないショパン ノクターン第19番、プーランク 15の即興曲第12番等を弾くことにした。

杉並公会堂のベーゼンドルファー、紀尾井ホールのスタインウエイ。私が弾きたかったノクターンはピアノに助けられて美しい音だった(自分の技量は別)。一次は淡々と弾いてその音に驚きもう一度ベーゼンで弾きたいと願った。二次は緊張して音の美しさに気づく余裕がなかった。本選では冒頭に弾いた前奏曲で暗譜落ちをしたので、入選は望めないと欲を捨て去った途端、ピアノの音がちゃんと聞こえてきた。メロディーを歌うこと。本当はヴァイオリンのようにずっと繋げたいけれどそんなにピアノだから音がのびない。人が歌うように、息が続く限りはのばして、息つぎの時に間が空くように。そして、美しい単旋律は、聞こえたらそれだけで耳をひきつけられるような。

自分の理想と自分の技量は違ったけれど、でも今年は終わったあと、好きな曲を弾けた満足感が残った。


友人にいただいた花束。もう二か月近く美しい造形を魅せてくれている。調律したてのピアノの上で、喜んでくれているような。



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