2022年9月25日日曜日

杉並公会堂のベーゼンドルファー 紀尾井ホールのスタインウェイ

この夏は名ホール・名器に触れる機会があった。季節が終わるのが名残惜しい。

40歳過ぎてからチャレンジを始めたアマチュアコンクールのお蔭で、今年はこの2つの素晴らしいピアノを弾くことができた。

杉並公会堂のベーゼンドルファーは、一次予選、二次予選とここが指定されているので、応募している限りは毎年弾く。そのたびにいろいろな感慨がある。「ベーゼンは特に低音の響きが良い」との予見があるので、自分が弾いてみると思ったよりもタッチは軽く、音も大きく響き、弱音が綺麗に出ないのではないかと心配になる。しかし後で録音で聴いてみると、「これが私が出した音?」と思う程、デリケートな弱音と、豊かなバスの響きに痺れてしまうのである。一番鮮明に覚えているのは、ドビュッシーの「雨の庭」を弾いた時のこと。なんと透明感のある美しい音が聞こえてくるのだろう、と演奏する自分と聴き惚れる自分が遊離した感をもった。こんなピアノは初めてだった。

紀尾井ホールのスタインウェイは、他のコンテスタントが弾くのを先に聴き、何と美しく響くのかとうっとりした。一方で、自分のようにペダリングに課題がある者は、上手くコントロールしないと響き過ぎて全部滲み絵のように聴こえてしまいそうだと懸念した。二曲弾くうちの最初の曲は硬質な音色で弾きたかったので、上手くできていない状態で賭けだが、ある部分はハーフペダルに、ある部分はフィンガーペダル(ダンパーペダルは踏まない)に本番でしてみた。二曲目は逆にいつものとおりのペダリングにした。ペダリングが結果どう聴こえたかは、弾いている本人にはわからないが、華やかな音、クリスタルのように繊細に響く音がホールの威力で倍増されているのは感じることができた。

望外にいただいた機会、この夏の忘れ難い思い出だ。



2022年9月24日土曜日

青柳いづみこ氏 安川加壽子生誕100年に寄せて

嵐の中コンサートに行ってきた。

安川先生のお弟子さん達の発表会のプログラムから選ばれた曲目。ドビュッシー、クープランといったよく知った曲から、バロー、マレ、カゼッラは全く知らなかった。知らない曲を聴くことができるとそれだけ世界が広がるような気がして心躍る。プーランクの「村物語」は劇を見ているようで活き活きと、ピエルネの「愛しい人たちへのアルバム」は懐かしい気持ちにさせる小曲集。

最後に青柳氏が義姉を亡くされてから弾くようになったというシューベルトの即興曲集から3曲。フランス音楽、とりわけドビュッシーの専門家とされるこの方がシューベルト?と驚いたものの、曲が始まるとただただ惹き込まれた。衒いもなく内省的で、ピアノを使って歌っているようだった。バスの響きの良いこと。メロティのピアノが優しいこと。気がつくと涙を流していた。何が響いてそうなったのか分析しようとしてやめた。とてもいい演奏だったということだ。



2022年9月19日月曜日

Kapellを聴きながら ショパン ソナタ2番 3番他

各地 荒れた三連休だった。

少ないものの国内客の工場に台風の被害がないか、大雨の中国や地震の台湾で客先に影響がないかヒアリングしてもらったり、九州の親戚の状況を確認したりであっという間にもう最終日。

東京はハリケーンのような横殴りの雨かと思えば、狐の嫁入りのようなお天気雨だったり落ち着かない。こんな日はと網戸の掃除をするしかない。マンションはベランダ掃除にも下の階の人に気を遣うが、これだけの雨なら少々の網戸の水の跳ね返りも気が付かないのではと。

気張ってやり始めていると、久しぶりに友人からLINEが。「今 NHKFMでウィリアム・カペルの演奏やってます。」急いでつけると耳に飛び込んできた。彼女のチャットが続き、同時代に同じく夭逝したリパッティも思いだしながら、お互い朝から良い演奏を楽しんだ。

網戸掃除も漸く終わり。身体も動けなくなるくらい汗もかき、暫し休憩。いただいたKapellのソナタ集をかけてみる。一枚ずつ聴いていくのが楽しみで今回は二枚目。ショパンの3番、2番、途中にワルツやノクターンがはさまって音楽会のような構成だ。そのあとはメンデルスゾーン「羊飼いの嘆き」、シューマン「ロマンス」、モーツアルトのソナタ16番。ショパンのソナタもいいが、小品がいい。「自分の弾き方」を聴衆に喧伝するピアニストが多い中、内省的で押し付けない弾き方は耳にすっと入ってくる。

いい音楽を聴き、それを友とも分かち合えるとは幸せなことだ。


2022年9月11日日曜日

フランス音楽講座 「夜想曲」「サルタレッロ」マスネ

スタイルとリズムの為の練習曲から二曲もっていった。

今日は聴講が多く、弾く人が少ないので緊張して臨んだ。小品だが、夜想曲は「珠玉の」との修飾語に値する美しい曲。サルタレッロは中世のイタリアの舞曲で、小さな跳躍が特徴。早くて指がひきつるが運動性とマスネのメロディーが合わさると不思議に忘れ難い一品となる。

フランス音楽講座なのだが、今日受講生が弾いたブラームス「6つのピアノ小品」から#1と#2曲が秀逸で、今も耳に残る。冒頭から心をわしづかみにするメロディーに引き込まれ、もの哀しい雰囲気を抱いて終わる。脈絡もなく、季節の移り変わりを意識し、ああ、もう秋なんだ、と思った。

この他、20年前の受講生の方がたまたまドイツから里帰りで参加。飛び入りで、先生と連弾。ビゼーやスクリャービンを初見で弾かれ、先生と即興でのセッションに皆大興奮。こんな贅沢があるなんて。いろいろ辛いことがあっても、時におもいがけず、こんなボーナスがあるから、生きていけるんだなあと思うほど音の喜びに酔った時間だった。



2022年9月4日日曜日

今日のひと日の紅

気がついたら9月だった。

長月の 今日のひと日の 紅を恋ふ 池内友次郎

デュオ・ポッキーズの友人からいただいたこけしのハンカチーフと「こけしみるく」という「釜人鉢の木」さんのお菓子。今年は二人でいろいろなところで弾きましたね。あるコンクールでは地方本選まで。優秀賞もいただいた。一生懸命やったら2人で弾いたのに3人分位頑張れたかも。楽しかった酷暑のトレーニングを讃え合い、彼女が欧州の学会から帰ってきたらお疲れ様会をすることを約した。