音、と考えたのだが、間違い。匂いだそうだ。
五感の中で嗅覚だけが、海馬に直接情報を送ることができるからだと。
今日は母が、はりきって、朝から煮物。それぞれの匂いがあまりにやさしく、ふともれ聴こえた自分の好きなメロディーに心ゆすぶられると同じ位、気持ちが鷲掴みにされた。
母の時々の贅沢。それは、伊吹いりこを使うこと。出汁をとって冷蔵庫に大切に。それをとりだしたからには、今日の煮物は力こもったものでしょう。
そう。まだ高いけれど、漸く手をだせるかも、という野菜といえば。
筍。
前日に糠で茹でて、冷ましたものを出汁にいれる。
ほんの少し醤油をたらし。アイヴォリー色のやわやわとした筍が染まっていく。
この間の、季節の根のものを煮る時の、むせるような匂い。ああ。
最後に、これも昨日母が狙って、選って買った季節物。
丁寧に筋も灰汁抜きもした・・・。
そう。蕗。
あおあおとして、あお臭い匂い。噛めばほろ苦いのがわかっているけれど、まずは目で愛でる。
ひさびさに糸ひく蕗を食べにけり
山口誓子
我が家は春の匂いでいっぱい。
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