中学・高校生時代はフランス文学をよく読んだ。
中学生の想像力ではよくわからないながら、それでも実年齢よりも大人になりたくて、ただ読んだ。マルタン・デュ・ガールの「チボー家の人々」、ギュスターヴ・フローベールの「ボヴァリー夫人」、ロマン・ロラン「魅せられたる魂」。
高校になってサン=テグジュペリの「夜間飛行」「人間の土地」の透徹した個人主義の感触に惹かれ、何度も繰り返し読んだ。夢中になったのは、堀口大学の名訳も相俟っていたかもしれない。「愛するとはみつめあうことではなく一緒に同じ方向を見ること」。これもよく引用される有名な言葉だ。あの頃最先端の職業であったパイロットで、44歳で二次大戦中に地中海上空で消息を絶ったという人生も、ある意味謎めいていて好奇心を掻き立てられた。
という印象だったが、今般出版された青柳いづみこ氏の「花を聴く 花を読む」には、サン=テグジュペリが実は彼の作品「星の王子様」にでてくる我儘な「薔薇」に似たところがあるという記述があり驚いた。彼の「薔薇」に擬せられた妻コンスエンロが書いた「バラの回想」を読むとそういう一面が見えてきたそうだ。
冒頭の「薔薇」の章から一気に惹き込まれ、勿体ないことにその日のうちに読破してしまった。ちなみに、「薔薇」をタイトルに関する曲は結構少ないそう。好きな作曲家であるヴィラ=ロボスが「カーネーションはバラと喧嘩した」という面白い曲があるそうなので早速きいてみよう。一気に読み終わったが、これから本に記された「花」の音楽をネットで探して聴きながら読むつもり。知らない知識、聴いたことのない曲が一杯詰まった、ひと足早い「音楽の福袋」だ。(写真はAMAZONより借用)
同時に刊行されたCDが、こちら、「花のアルバム」。本にでてくる曲も入っている。フランス音楽の大家なので、クープランの「ケシ」、タイユフェールの「フランスの花々」が入っているのは想像していた路線だが、八村義夫の「彼岸花の幻想」のように日本人作曲家の手による4曲も全て初めて聴く曲で興味深い。
多彩なタッチで、花の質感や、時には香りのような空気感まで表現できるピアニストだからこその選曲だ。
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