芍薬を描く牡丹に似も似ずも 正岡子規
はしりの芍薬を花屋で買った。香る、香らない、いろいろな品種がある中で、上品なライチのような香りがした。花屋さんでは咲かないでしょうと言われた固い蕾までも、いきなり、ふわり、と花弁を開いた。心開いてくれない人から笑みをもらった心地がした。
芍薬は色が変わる。ということを今回はじめて認識した。艶やかな、生命力もっとも美しい紅色から、ふと目を離した隙に、殆ど象牙色に近い色になっていた。これには驚愕。
この花びらが、遠心力の限界点にとうとう花びらを落とすのだが、視覚的にはドサリ、と花弁の塊が落ちる。しかし、実際には音は全くせず、落ちる瞬間の映像は、象牙色に光るシルクのストールをはらりと肩から滑らせた、という表現が相応しい。空気が一瞬、絹一枚動いただけ、と。
あまりの優美さを惜しんで、その花びらをドライフラワーに。
そうすると、なんと、もとの花の名残の紅が、象牙色に混じり、肌色というかほんのり薄い橙色の縮緬の着物のように姿を変えて現れた。
芍薬を供へその人にあふ如し 水原秋櫻子
本当、人のように変わっていく。
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