2025年4月27日日曜日

「疎外感の精神病理」 和田秀樹

キャリコンの友人に勧められて購入したが手元に置いて数年。ふと手にとって読んでみた。

日本人の課題の一つが「疎外感」という病理。これがもとで同調圧力やSNS炎上が起こるとの分析。その誘因が学生時代のカースト制。1stリーダー、2ndフォロワー、3rd仲間外れの集団の中、2ndの中間層が3rdにならないため、子供の頃から努力することで日本人の同調圧力は更に磨きがかかるとの分析。

確かに学校教育のある時期以降は学業の成績で順番を公表しなくなった時期があり、次は友達を作ろうという政策のもと、友達の数がその人の評価に繋がったとの評論は論理的に納得感があるものの、その時代の前から生きていた人にとっては、その前からいじめ、仲間外れはあったよ、という切実な反論があるだろう。

また、この仮説だけだと、海外ではこれほどいじめがないのか?という疑問になる。

動物が群れの中で優劣をつけようとするのと同じ、人間も何等かそのグループ内で序列をつくる。運動能力だったり、頭脳、人種、宗教だったり。その時々で力をもっているグループが恣意的に利用しているのではないかと。子供は単純に人間関係をみながら斟酌するものが大人に比べて少ないからそれだけストレートに表しているだけではないだろうか。

幾つか反駁したい点はあるものの、最後の章「疎外感に精神医学は何ができるか」にて人に直に依存できる体験を与える、というひとつの解の提起を読むことができたのは良かった。また、この人が出会ったハインツ・コフートという心理学者による心の自立は、フロイトが打ち出した自我を鍛えて心の自立を目指したものであるのに対し、「人間というものはそもそも依存的な生き物なので、むしろ自立の強要は不可能なことの押しつけだ」という主張を知ることができたのも収穫だった。

今日はいい天気だった。本の考察を一度とっぱらって、陽光のもとに歩み出よう。つつましやかに馬酔木も咲いている。

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