2021年3月21日日曜日

キャリア・コンサルタント 第15回実技試験(3)

前回記してから時間が経ってしまい、もう第16回目の試験が3月初旬に開催されたので、なんだか間の抜けたタイミングになってしまった。が、年度を跨がぬうちに、とりあえず最後まで記して置こう。

実際の面接は、面接前にクライアント役の方とドアの前で会い、紙1枚にその方の名前、年齢、職歴が記された紙を渡される。どこまでディスクローズしていいのかわからないので概要だけ紹介するが、40歳台の女性で卒業後に一度正規社員として就職するが数年後に退職し、それからは派遣社員として十数回転職を続けている。そろそろ正規社員になることも考えているが・・・という来談経緯。

冒頭のお話しで正規社員になることを考えていることは分かったのでそこから話を聞いていく。しかしどの応答も短かく、正規社員になることを考えているきっかけや、何に悩んで前に進めないのかが見えない。沈黙には耐えられるようになってきたので、せかさないようにして話してくれるのを待つのだが、15分の面談なのにもう10分を過ぎても答えが紋切り型で、感情は疎か情報も出してもらえない。そろそろ焦ってきて、正規社員になることを思いとどまらせることがあるのか、何がストッパーとなって話せないのか、ついこちらの想定からの質問をしてしまい、ますます焦る。奈落の底に吸い込まれていくような、あの「落ちていく」のがスローモーションで分かる感覚に襲われる。

もうどうにも話の接ぎ穂がなくなり、最後の2-3分のところで、最初に就職した時の話を聞いた。その時、はじめてクライアントの方の目の中に何か感情がよぎり、「あの時、一生懸命働いたのに。」と短いながら、初めて気持ちが表れた言葉を紡いでくれた。そのあとを促すと「残業が多くて身体を壊して、そのあとは。」と言葉を切られた。学校を出てすぐに就職して、頑張って働いたのに、身体を壊し。そして、この年齢は、そうだ、就職氷河期時代と言われ、政府も再就職の対策を打ってサポートにあたっている!その後は上手くいかずに正規社員になれずにきたという設定なのだ。この人はどう思っているのだろう。その後のキャリアをどう感じているのだろう。

と、漸くとっかかりをつかめたと思った瞬間、チャイムが鳴って試験が終わってしまった。

ということで、今まで一度も(講座や勉強会でも)ケーススタディも模擬面接もしたことがない、もっと言うなら就職氷河期世代なので、会社の後輩としても人数が極端に少なくあまり職場にいない世代の方のケースに「あたって」しまった。何もできず、もう、これで不合格決定。

そして、「あたってしまった」と思った瞬間に、実際のコンサルテイングなら「あたってしまった」クライアントの方は大迷惑だ、来なければ良かったと後悔するだろうと気付いた。私は、こう無意識に感じてしまうこと自体、まだこの資格に値しないのだろ。

面接後はすぐに口頭試問である。もう不合格決定だし、自分が情けないしで、言葉が出ない。深呼吸してゆっくりと考えながら話した。率直に自分の失敗した点を伝え、このまま面接を続ける場合、最初の職場での出来事と感じたことを、クライアントが話したいだけ話してもらったら、多分やりたいことは彼女の心の中にもう既にあって、封じ込めていただけだから、それを聴きたいといった内容を伝えた。

酷い面接であったにもかかわらず、結果的には一回目よりも全体的に(要素毎に評価が点数化される)点数が上がっていた。自分の目が信じられなかったというのは初回に記したとおり。

敢えて、この点数から何を評価されたのか推測してみる。3点か。短い答えしかしてくれない難しいケースは必ずあるらしいが、「何か語ってくれるはずだ」とあきらめずに(できずに質問してしまった時もあったが)寄り添う態度を崩さなかったこと。初めの職場での出来事が彼女の仕事への考え方に大きな影響を与えたことに最後の最後気づいたことと、それを口頭試問で今後の展開に絡めて話せたこと。3点目はその展開についての口頭試問で、ジョブカードを使ってこういうことを聴き、彼女と共に彼女の特長を表現できるようにしたいと話したこと。

ジョブカードとは厚生労働省が推奨しているキャリアシート等のフォーマット。講座では一通り教わったが実は政府の型どおりのフォーマットでしょうと思い込み、それ以上掘り下げなかった。二回目に実技試験を受ける一週間前に取り出して読んでみると、いろいろな世代が使えるように工夫されており、なんというか、キャリア形成の役に立つようツールを揃えようという意図がよく見える内容であり、非常に感銘を受けた。これは使えると(実践でも対試験でも)思い、いろんなケースで使うことを想定してみた。具体的に、彼女のケースでこうやってジョブカードを使いたいと言えたことも、道具を使いこなそうとしているとみなされたのかもしれない。

資格取得の勉強に関しては、多くの方のHPを参考にさせていただいた。学科は通常の勉強の仕方で良いのだが、実技はライブで相手によって変わること、また相手に信頼感をもってもらった上で相手の中にあるものを引き出せているかを評価されるので、どんな風に勉強すればよいのか、どうすれば評価されるのかわからず、自分がやっている勉強方法で良いのか迷いの連続だった。その為、同じような悩みを抱えている方々のHPは非常に参考になった。ささやかな恩返しのつもりで失敗も含め自分の経験を記してみようと思った訳だが、分かり易い表現ができたかは心もとない。


資格取得は一つの過程でしかない。とはいえ、自分としてはこの資格を取ろうとして短い時間を活用して、最大効用をあげるにはどうやったらいいのか。考え抜いた経験はとても良い機会だった。そして一緒に学んだ20代から60代の学友と、同じ目標に向かって、そのために歯に衣着せぬコメントを交わしたこと。妹には模擬面接に何度かつきあってもらってもらったのだが、彼女の即興の応答に、ああこんな風に思うんだ、感じるんだと驚かされたり。有り難い体験をさせていただいた。

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