東京では新盆が終わった。店頭にはまだほおづきや菊が並ぶ。
墓参りに行こうと思っていたが、今日は疲れ切って動けなかった。
いきなりの夏空に、つい先日までは梅雨だ、ゲリラ豪雨だ、と言っていたのに、見えるのは入道雲。聞こえるのはやかましい程の蝉の声。こういう夏の日、そういえば父は会社は土曜日が半ドンだったのに結局残業で夜に帰宅していた。それでも普段よりはずっと早い時間帯に帰れるから、実に嬉しそうな顔をして、汗をふきふき、声も高らかにただいま!と言って玄関に入る。働いて働いて、週末を迎える気持ち、今ならよくわかるのだが。あの頃はただ、父の弾む声に、今日は土曜日なのだなと感じた。
水を浴び、着替えたら、母が急ぎすいかを出す。父は真剣な顔で塩を少量降振って、生き返ったようだと言う。時には、子供達にちょっとしたお土産があることも。舟和の芋ようかんだったり、コロンバンのワッフルやアップルパイだったり。
まだ夜の帳が下りる前、夏だから夕焼けが消えきるかどうかという時。熱い日差しの名残も去り、ふっと風が通る頃。菓子箱をあけて歓声をあげる子供達を満足気に眺める父。数十年も前なのに、夏の夕べの風が通り過ぎるとき、家族が集まった時の幸せの記憶が蘇る。
友人から、市民農園に通ってつくったというじゃがいもをいただいた。ころころと、大地の栄養を吸い尽くしたかのようになんだか元気のいい姿だ。友人が育てる間注いだ時間と労力の結果がここにある、自然の力と友の気持ちをおすそ分けいただいた。
0 件のコメント:
コメントを投稿