2021年5月1日土曜日

紅玉のコンポート 「アイ・ラブ・カナダ」 「世界映画名作全史」

90歳過ぎで一人で暮らしている伯母の体調が心配だと聞いた。緊急事態宣言下ではあるが、少し遠いものの同じ都内でもあり、顔を見に行ってきた。

行ってみたら心配していたよりも元気そうでほっとした。だが、内臓系の懸念点あり、検査もあり、病院通いで疲れていた。良いニュースは漸く重い腰をあげて介護申請をしてみようという気になってくれたこと。家族に、お国に尽くしたこの世代の人なので、国や人の厄介にならないよう、幾ら勧めても「申し訳ない」と言って申請しようとしなかったのだが。独りではそうも言っていられない身の危険を感じるようになったと言う。

この伯母と伯父は、共に私が子供の頃から甥や姪を可愛がってくれた。海の家へ連れていってくれたり、伯父が講演会の為にロシアに行けば、或いは夫婦でトルコに海外旅行に行けば、お土産と共に彼の地の面白い話をしてくれた。

そんな、仲睦まじい二人だったが、伯父が亡くなり。伯母が気持ちを振り切るように突然カナダに移住したのは、多分今の私と同じ年代だったかもしれない。あの当時、55歳からリタイアビザを取得できたと言う。以降、彼女が80歳前にまた日本に戻る迄、留学の時、旅行で、出張の帰りなどに何度もカナダの自宅に寄っては話をした。伯母は住んでいる間、地元の日系の新聞にカナダでの暮らしや感じたことを投稿し、それが一冊の形になっている。私も今でも読み返すと、あの時代のカナダの一端を知る者として共感するところが多い。(「アイ・ラブ・カナダ」猪俣満子著 社会思想社 下記写真はAmazonより)

一方、ステイ・ホームとなって以前より映画を見る機会が増え、また引っ張り出して通読している本がある。「世界映画名作全史」(猪俣勝人著 社会思想社 下記写真はAmazonより) 

構成は著者がピックアップした映画毎に内容が読める辞書形式。映画名、原作、脚本、監督、音楽といった基礎情報。映画のワンシーンの写真。著者の興味からなるトピックスや個人的な思い入れ等の導入部、あらすじ、批評が記載されている。

例えば「ゴッドファーザーPARTII」(略)「何か所かビドー(父)が成長し、勢力を拡げてゆくシーンがマイケル(息子)のありようと比較されていたが、それらはすべて名もなきイタ公と見棄てられたアメリカ社会の中での精一杯おあがきとして描かれようとしていたのではないか。(略)脚本、監督のコッポラ自身イタリア人であり、父のカーミン・コッポラの胸しみるような哀しいメロディの中にも、その差別された民族の哀しさがせつせつと訴えられていることがわかる。アメリカの半分を支配したといわれる巨大なる悪の組織マフィアの活動が哀しいのではない。そんな真っ黒い心の子を生んだイタリア移民の苦しい歴史が哀しいのである。カーミン・コッポラのメロディはそれを訴えてやまない。」

伯母に会ってくるならと、母はまだ痛みが取れない身体なのに、夜遅くまで赤飯を炊き、根菜を煮しめ、林檎のコンポートを作ってもたせた。深鍋にバターを。狐色になり、幸せな香りが漂う。紅玉のスライス、色付けの為の真っ赤な皮、レモン汁、シナモン、氷砂糖、そしてラム酒。煮たあとに皮を取り出すと、林檎は薄紅色に染まり、花のような優しい色合いになる。心身共に、栄養が行き届いて元気になりますように。

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