2018年8月25日土曜日

スタインウェイ 向日葵

紀尾井ホールのスタインウェイは楽器もホールも一流で、夢にみるコンビネーションだ。よく響き、家で練習するのに慣れているよりももっとペダルを細かく踏み、濁らないように調整すべきだったと反省。あがってそんな余裕ももてないと分かっているのであれば、常日頃のペダルを更にもっと細かく制御しておく必要があるのだろう。音は美しく、一曲目はあがって暗譜落ちをしてしまったが、二曲目はかえって俗念を捨てたからか音の響きを楽しむことができた。美しさは楽しめたが、力強い部分、響きにのせるということはまだできなかった。ホールに比して音量は小さかったことだろう。こればかりは、家のピアノだけではなくホールで弾く機会をつくって自分の耳と身体で確かめていくしかあるまい。

スタインウェイは1853年にドイツのシュタインヴェークがニューヨークに渡り、名前もスタインウエィへ、そしてメーカーとしても開花した。工場は米独両国にある。他の欧州メーカーと異なり、宮廷で響かせる前提ではなく米国の音響まだ乏しかった時代に音を響かせることを主眼に新しい技術を次々と投入。同時にマーケティングの意識も高く、その頃のメディアとしては大人数にPRできる展示会に積極的に取り組み、1867年のパリ万博では金賞受賞。またスターピアニストに弾いてもらう、コンサートを後援するということも行っており、営業戦略も時代の先駆者だったとえよう。

技術戦略も明確だ。革新的な技術は特許をとり、その先進性で自社を守ってきた。これも会社経営の教科書に書かれた現代企業の手本そのもの。音を響かせる、その為の技術は、たとえばグランドピアノで弦を交差して張る交差弦。楽器全体を音を伝導する為に、金属のサウンドベルも設けた。

華やかな音は、製販両輪の知恵と努力の成せる業。


コンクールの時に妹からもらった向日葵。飾るだけで太陽が家にきたようだ。眩しい、圧倒的な強い生命力。存在感。花を見ながら、スタインウェイはそういった強い力をもっているとあらためて思った。

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