先週は杉並公会堂で憧れのベーゼンドルファーを弾く機会に恵まれた。
毎年応募しているアマチュアピアノコンクールがあり、一次、二次がここで行われるからだ。アマチュアであろうとなかろうとコンクールに出る以上しっかり育てようという気概が講評に表れていること、家族が応援してくれてきた幸せな記憶があること、そして普通触ることができないベーゼンドルファーを弾くことができる、が毎年参加している理由。
ベーゼンドルファーは、1828年ウィーンで創業。ウィーンの音と称される、豊かな中低音部、表情豊かなピアニッシモがよく特徴として挙げられる。リストが弾いても壊れない「耐久性」が有名でもあるが、標準の88鍵の下にさらに弦を張った97鍵のピアノとしても知られる。
初めて弾いた時は、知識もなく弾いたので、ふと気づくと最低音よりも低いところに黒鍵が並んでいるのにぎょっとしてそれだけであがってしまったものだった。何度目かにドビュッシーの「雨の庭」を弾いた時、その第一音が鳴った時、何と美しい音なのだろうかと思った。その時に受けた感動は、今でも忘れられない。このエクステンドベースの追加により弦の響板が広がり、共鳴する弦が増え、中低音の豊かな響きにつながる。ブゾーニがバッハのオルガン曲を編曲する時にベーゼンドルファーに相談したことが始まりだという。
今はヤマハの子会社となった同社だが、ベーゼンドルファーはベーゼンドルファーであり続ける。185年の間に5万台、年に250台しか製造されておらず、標準製造工期は62週間、最終調整は8週間。工業製品というより芸術品(同社HP)。
さて。そんな芸術品に触れ、音を奏でることのできた時間は幸せだった。悲しいかな、存分に歓びを感じるだけの余裕はまだまだもてないのだが。
コンクールのあと、妹からお疲れ様ともらったスプレーシフォンブルーとカーネーション。家族の嬉しい記憶がまた一葉増えた。
0 件のコメント:
コメントを投稿