2018年6月28日木曜日

天空劇場 ベヒシュタイン

週末に天空劇場のベヒシュタインを弾く機会に恵まれた。通常であればアマチュアには手が届かないホールなのでとても楽しみにしていた。友人との連弾とソロ2曲で参加した。

連弾はバレエ曲「コッペリア」から2曲。とても楽しかったが、Secondの私の譜めくりが失敗し暫し迷走。Firstを弾く友人に迷惑を・・・。「本番前の肝試し」と慰めていただいてしまった。次回はリベンジだ。

ソロは1年振りの舞台であがってしまった。幼い頃はあがることが殆どなかったのに大人になっての再出発では自分の練習不足からくる自信のなさが「あがり」の原因のようで、殆どいつも起こる。昔はものを思わざりけり。そんな自分でもピアノの音の美しさは楽しむことができた。華やかなスタインウエイ、深い響きのベーゼンドルファとは全く別の魅力がある。バランスが良く、ホールのせいか響きが気持ちよく通る(自分の技術は別として)。音色を何かにたとえればシルク。キラキラピカピカする訳ではないが、上質な光沢がひとめで他の素材と一線を画するのと似ている。

ベヒシュタインは1853年ベルリンで創業、多くの作曲家、ピアニストを喜ばせたが、第二次世界大戦で工場を破壊され、またナチスに「第三帝国のピアノ」と位置づけられた為、戦後もその記憶に苦しめられたという。1962年にアメリカ企業となり、1986年にまたドイツに帰した。会社としては100年余の間に大きな浮沈を経験した。強い弦のテンションとアグラフ(弦の留め金)の使用により、弦を鉄骨に触れさせず響きの良さを追求する設計思想と言われるが、その思想は政治や経営、製造する個々人は変われど、アイデンティティとして引き継いできたものなのだろう。


ホールの扉をあけて一歩踏み出ると、そこは21階の空に浮かぶ空間。雨が止んでふっと陽射しが降り注いだ。ガラス越しの空と、鏡面ステンレスでメタリックに映る空が。眼にも耳にも美しさ染み入る天空劇場だった。


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