2018年6月15日金曜日

「回想のフォーレ」 マルグリット・ロン

ピアニストのマルグリット・ロンがフォーレとの思い出を語っている。初めて数年前に読んだ時には、フォーレ伝なのか、音楽論なのか、自伝なのかよくわからず、随分私的な思いいれが入っていると感じ読みにくかった。しかし今回、要素毎に読み分ければ興味深いと思い直した。

フォーレの人物像の一面:
オルガニストとしての経歴の長さ、サンーサーンスとの友情、パリ音楽院の院長として新風を吹き込んだ手腕、ラヴェル、デュカス、シュミットといった教え子達、ロン夫妻との深い交友と別れ(この本だけでは何が原因だったかわからないのだが)、耳が聴こえなくなってからの苦しみが描かれている。活き活きとした場面もあり思わずひきこまれる。たとえばこんな記述。当時の教室の雰囲気が目に浮かぶようだ。誰か映画にしてくれないだろうか?

フォーレは45分遅れて到着すると、煙草をふかし、座ると、すぐに夢想から我に返ってこう言った・・・。「ラヴェル、それでは君の<水の戯れ>を弾いてごらん」。ラヴェルがピアノの前に座り、最後の音を打ち終わると、先生はちょっと考えていて、それから夢想へと戻っていった。少しして、先生は時計を見た。レッスンはそれ以上進むことなく、終了した。」エネスコが賛美と感謝の念をこめて、こう付け加えていることも事実です。「しかしこの日、私たちは大きく進歩した。」 ~フォーレとその人生~ 

フォーレの音楽の優れた点:
3つの統一性による規律が尊重されている・・・それは本物の古典主義からくるとくちょうのひとつ・・・最初に様式(スタイル)、次にリズム、最後に調性 この3つの統一性。

確かに、この3点は優れているのかもしれないが、その統一性或いは執拗さが、工夫しないと退屈な繰り返しに反転してしまう弾く者にとっては両刃の剣だ。

フォーレが大切にしたもの:
フォーレが、気に入って「日に6回」は繰り返していた言葉あります。それは「ニュアンスをこめて。でも動きは変えないで。」こんな言葉もありました。「僕たちにとって、バス声部は重要だ。」バスへの愛着、私はこれをフォーレから学びました。・・・ フォーレは短くて息をのむような「クレッシェンド」や「ディミヌエンド」を好んでいました。それはちょうど、トスカニーニが驚異的なダイナミックスによって最高に大きな効果を引き出すやり方と似ていました。 ~魔法の輪 作品の統一性~

確かに、今弾いている舟唄1番にも、一小節でfからpへ急降下する部分、最後の盛り上がり部分メロティーに対をなす美しいバスなどすぐに思い浮かぶ。若い時の作品から彼の特徴がちりばめられていることが分かる。フォーレが大切にした部分を意識して表現することで「フォーレらしさ」にく一歩近づけることができればと願う。

「回想のフォーレ ピアノ曲をめぐって」 Ai Piano avec Gabriel Faure 音楽の友社

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