先月のフランス音楽講座。
受講生が多く、それぞれコンサートの前の準備等で大曲も多く活況。そんな中、私はマスネの小品2曲をもっていった。
フランス音楽講座には、先生がドビュッシーを特に専門にされていらっしゃるのだが、自分は殆ど弾いたことがなく臆してもっていかず、基礎から勉強しようとフレンチ・バロックをもっていっていた時期がある。それから、暗黙のうちに「フランス音楽」に準じてみていただく人が多いショパン、子供の頃に弾いて好きだったフォーレ、そして漸くドビュッシーを練習してもっていくようになった。自分では無理かと思っていたラヴェルの「水の戯れ」、自分にとっては新しい境地でプーランクも何曲か弾いた。
今年は、今まで弾いたことがないフランスの作曲家を選ぼうと思い、フランス人の作曲家をいくつか挙げてピアノ曲を調べ、フィーリングがあったマスネに白羽の矢をたてた。
マスネと聞くとパブロフの犬のように「タイスの瞑想曲」と結びつく。だが恥ずかしながらほかにはあまり知らない。マスネは1842-1912年の生涯で、作曲をグノーに師事し、主にオペラや歌曲を作曲した。裕福だったが6歳で父の事業が破産、それでも神童惜しまれなんと11歳でパリ音楽院に入学。カフェでピアノを、劇場でティンパニを演奏してアルバイトとし学校に通ったという。
今回練習した「黒い蝶」「白い蝶」は短いながらも、それぞれの曲のキャラクターが明確で、優れた作家の短編のような凝縮感が楽しめる。
「黒い蝶」譜面は難しくないのだが、フランス独特のノアールな感じを、でも重くならないで出すのはとても難しい。3拍子だが、正確に3つ拍子を刻むと「子供のためのマスネ」となってしまう。agitato(激しく、急き込んで、苛立って)という指示と、ワルツでつかわれれば優美な印象の3拍子でどう表現するのか。弾くたびに異なる弾き方を試したくなるができる面白い曲だ。 (写真は楽譜、IMPLSEよりダウンロード)
「白い蝶」の方は対照的に白い蝶がふわふわと舞っているような、空気感が出せるかがキーだ。柔らかさ、時に方向感覚が分からなくなるような非現実感、羽根が漂うような無重力に近い軽さ。こちらは8分の9拍子と、大きく分類すればこちらも3拍子。8分音符、16分音符と音価が短い音が連なり、飛行の軌跡が見えるようだ。「白い蝶」も結構「空気感」を出すのが難しく、拍から少し外して高みへの浮遊、上からの落下などを表現してみた。パターンはある程度決まっていて同じに弾くと「繰り返し」感がでてしまうので、タッチを変えて硬・柔・重・軽・楽・悲といった色を思い浮かべて弾いてみた。
短い二曲だが、弾き込まないとなかなか「フランス曲」ぽくならず、大人のテイストにするには結構手強い曲である。
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